第386話 勝利へのカギ
「あのさ......どう考えてもそんな話は嘘で、騙されているに決まっているでしょ?」
僕はやや呆れ気味にヒロトに教えてあげることにした。
「いやいや、女神様が嘘をつくわけないじゃないですか? 女神と言えばとても清らかな心を持った存在の持ち主で、人をだますなんて悪いことを考えるわけないじゃないですか」
ヒロトは半笑い気味で言葉を返してきた。
こいつ......ディオネ様も女神なんだからその理論は当てはまらないことに気づかない馬鹿なのだろうか? でもそんな細かい矛盾を指摘したところで、アフロディテの人の心を操るような巧みな言葉づかいでマコトのように説得されているのなら、今ここでヒロトを寝返らせるのは無理かもしれないな。
「さあ! ヒロト! 今度こそすべての世界を救うためにもディオネに能力を使って君の支配下に置くのです」
アフロディテは勝ち誇った顔をしながらディオネを指差した。
「すみません。アフロディテ様......とても重要なことに気づいたのですが質問してもよろしいですか?」
はっ!? もしかしてヒロトのやつアフロディテが悪いことをしていることに気づいたのか! さっきは馬鹿にしてごめ......
「アイネ姫の持っている『乙女ゲー主人公』の能力は覚醒しているのですか? もし覚醒していたら俺は今すっごくまずい状況にいるんじゃないですか?」
......うん。分っていたけどね。気づくわけないこと。
「ええ。どうやら覚醒しているようです」
僕のあきれた様子などお構いなしにアフロディテは答えた。
「えぇ!? 本当ですか!? だって覚醒条件は、ドMの王子様を鞭でぶっ叩くですよね? そんな状況普通起こり得ますか? 第一ドMの王子様を見つけるだけでも大変だって言うのに......」
はい、説明ありがとう、ヒロト。実は覚醒能力の発動状態を使うためには覚醒条件を満たさないといけないんだよね。僕はそれを忘れているうちになぜかその覚醒条件をたまたま達成していたんだよ。え? そんなことより『ラノベ主人公』の覚醒条件も知りたいって? この小説では語る予定はないらしいよ。
「さすが姫様です! あの時、アラン王子を鞭でぶっ叩いたのはそんな理由があったのですね!」
「え? ああ、そうだよ」
アスカが尊敬のまなざしでこちらを見ていたが、僕はこの話題にこれ以上触れて欲しくないので適当に流した。
「つまりこの勝負はアイネ姫がヒロトに能力をかけるのが先か、ヒロトがアイネ姫に能力をかけるのが先か......そういう勝負になりますね。お互いに覚醒能力を封じた方が勝ちという実にシンプルな決着ですよ。もっとも覚醒能力は使えば使うほどその能力の発動までの時間が短縮されますのでこっちの方が圧倒的に有利かもしれませんけどねぇ!」
うわぁ......アフロディテがすっごい悪い顔しているよ。ラスボスっていうよりいじめっ子みたいな顔だけど。
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