第378話 確率を超えて

「マコトちゃん! 話を聞いて欲しいんだにゃ!」

 タマの呼びかけに気づきマコトがこちらを振り向いた。

「うん。いいよ。私は戦いとか怖いから嫌だし、話し合いで解決できるならそれが一番だよ」

 マコトはほっとしたように自分の胸に手を当ててため息をついた。

 こいつ化け物みたいな強さのくせに戦いが怖いとか......いやでも中身がただの女の子だし仕方がないか。

「ありがとうだにゃ! 私の名前はタマ......前世でも同じ名前だったんにゃけど覚えていないかにゃ?」

「タマ......? 人間の女の子でその名前に心当たりはないんだけどな? ああ、でも女の子とは限らないか......」

 マコトはタマの質問に頭を悩ませて腕を組んで考えていた。

 何を隠そうマコトは前世が女の子で今は男の子。つまり前世の性別と今の性別が一致しているとは限らないのだ! と僕が補足説明をしておこう。

「違うにゃ! タマは前世でも女の子......いや正確にはメスなのにゃ。だって私の前世はマコトちゃんが飼っていた猫にゃから」

 なるほどタマは性別は変わってなくて種族が変わって......って、えぇ!? そんなこともあるの!?

「アフロディテ様、種族の変更もやってたんですか?」

 マコト! ナイス質問だ! 今僕が聞こうとおもっていたことを僕の代わりに質問してくれるなんて!

「はい。私ならばそういった願いを叶えてあげることもできます。先輩と違って優しい私ならですが!」

「アフロディテ! 私は優しくないとでもいう気ですか!? 決してめんどくさいからやっていなかったというわけじゃないですよ!!」

 ディオネ様がアフロディテの挑発にのって自滅している。女神としての器の大きさが違うね。いっそアフロディテの方に女神をやってもらった方が......おっとディオネ様に睨まれたのでこの思考はここまでにしよう。

「ということは本当にあのタマ!? 会いたかったよぉ!」

「マコトちゃん!」

 マコトとタマは抱き合って嬉しそうに涙を浮かべていた。あちこちの異世界に、そしていろんな時間軸に送られている異世界転移者が再開する確率なんてどれくらいのものだろう。そんなごくわずかな確率を超えて再び会えたわけだからなんて感動的なシーンなのだろうか......え? スザクとマロン姫のことがあるじゃないかって? 細かいことは気にしない気にしない。

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