第373話 決断の時

「手を握ってくれないわけですか......やっぱりそれでも敵対するということですか?」

 アフロディテはふぅと息を吐いて腕を降ろした。

「いや、動けなクされているから手を握るとかそれ以前の問題なんだけど?」

「あ、そう言えばそうでしたね」

 僕の言葉で気づいてアフロディテはちょっと舌を出して、軽く自分の頭を小突いた。

 あれだ......若い子がよくやる『てへぺろ』ってやつだろう。この女神はたぶん若くないけど......

「動くことを許可します!」

 アフロディテの言葉と同時に僕の横から何かが通り過ぎたのに気づいた。そしてその何かはアフロディテは手でつまんで受け止めたのだった。

「銃弾ですか......どうやら理解力のない方がいらっしゃるようですね」

 アフロディテは自分の手の中にあるものを確認しながら呟いた。

「残念だがお前のやっていることは全世界の幼女を苦しめることに他ならない。幼女たちを管理するとか都合のいいことを言っているがそんなやり方を俺は認めない!」

 銃を撃ったのはスザクのようだ。動けるようになったから西部劇のガンマンのように早打ちをしたといったところだろう。

 読者のみんなも気づいていると思うけど......別に幼女に限定してアフロディテは話してなかったからね!

「パパ! それは間違ってるよ!」

 お! さすがスザクの娘のマロン姫! さあ、スザクの間違いを指摘してあげるんだ!

「私以外の女の子に優しくしちゃダメ!」

「マロン、安心しろ......1番はマロン、2番が幼女さ。俺も辛いんだけど世間体も大事だから他の人にも優しくしなきゃならないんだ」

 だったら幼女に限定するなよとスザクに突っ込みを入れたいけれど、バカップルならぬバカ親子にはなんかもう突っ込むのすら馬鹿馬鹿しくなったのでやめておいた。

「あなたたちは女神をイラつかせる天才ですねぇ? スザクさんとマロンさん、これはあなたたちにも無関係な話じゃないんですよ。『第4次世界大戦』......あなた方はこれに巻き込まれて死に、そして次の『第5次世界大戦』ですべての人間は絶滅する。放っておけば絶滅する人間どもをこの私が救ってやるって言っているんだよ!!」

 アフロディテは床を踏み鳴らすとクレーターでもできたかのようにぽっかりと穴が開いた。

 やっぱりそうだ......人間を下等生物のように思っているこの女神の作る世界に未来なんてない!

「あなたの意見には賛同できない! 僕は......僕たちの未来は自分で決める!」

 お! 何か主人公っぽいセリフ決まった!

 周りに居るみんなも僕の意見に納得してくれたかのように頷いてくれた。

「なら......死んでもらうしかないですね。死んでもなお楽になれると思わないことですね」

 アフロディテは冷たくほほ笑むのだった。

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