第372話 諦めるべきかもしれない

「先ほど私は世界の住人ごと破壊すると言いましたが、そんなことをするのは本意ではありません。そこで質問です......なぜそんなことを言ったと思いますか?」

 アフロディテは手のひらを上に向けて僕を指差した。

「そりゃ......僕に断らせにくくするためじゃないの?」

「ぶっぶー! はずれです!」

 アフロディテは右手と左手の人差し指を重ねてバツを作ってみせた。

「分かりました! 人の嫌がる顔を見て楽しんでいるからですね!」

 聞かれてもいないアスカが勝手に答え出した。

「えぇ!? 私そんなに悪役っぽいですか?」

 アフロディテは両手をあげてわざとらしく驚いていた......って!

「いやこの状況で悪役じゃないって無理があるでしょ!!」

 僕はすかさず突っ込みを入れざるを得なかった。

 .....と言うかこの場にはボケ役しかいないのか!? さっきから僕しか突っ込みしてないような気がするんだけど気のせいじゃないよね?

「という冗談はさておき、正解が出なさそうなので教えてあげますね。私があえて悪役みたいなセリフを言うことでアイネさんは仮にワールドオーナーになっても『アフロディテ様に脅されたから仕方なくやった』と言い訳ができるのです」

 アフロディテはちゃっかり自分に様付けを......え? 気にするポイントはそこじゃないって?

「でも僕は......」

「はぁ......いいですか? よく考えてください。世界を破壊するとか関係なしにもう勝負はついているじゃないですか? このまま私を拒絶してもアイネ姫御一行様はここで全滅して終了ですよ? そんな最終回面白くないですよね? どうせならワールドオーナーとして平和に暮らしましたとさ......って方がハッピーエンドでいいですよね?」

 僕の言葉を遮ってアフロディテはあきれたようにため息までついて得意げに話しを続けた。

 確かにアフロディテの言う通りだ。ここから逆転の手なんて......もこの状況じゃ使えなさそうだし......

「そんな怯えた顔までして私に逆らう必要なんてないじゃないですか? さあ、すべてを諦めて私の仲間になりましょう......そうすればそんな怖い思いをする必要もないし、楽しい未来が待っていますよ?」

 アフロディテは僕に救いの手を差し伸べるようにこちらに向けて手を伸ばした......動けないから手を握ることはできないんだけど?

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