第371話 大切なもの

『お待たせしました。目的を話す前に読者の方も気になっていると思いますので今まで何が起きていたか説明しましょう』

 相変わらず読者にやさしくてありがとう、アフロディテ......その優しさを少しでも僕たちに向けてもらいたいものだ。

『今お見せしたのはもしもアイネさんがワールドオーナーになってこの先、この世界を過ごしたらどうなるかという可能性を見せたのです。そして見せた理由は、ただ理解ししてもらいたかったのです。この世界が“どうでもいい”などと片づけられるものではないということを』

 アフロディテの言うことは納得だ。僕にとってあの世界ではやりたい事や大切な人たちがたくさんいる。

「うっ! 確かにどうでもいい世界じゃないけれどだからと言ってワールドオーナーになったりはしないよ!」

『だから私はこう言わせてもらいます......』

 アフロディテは再び指を鳴らすと僕は光の中に包まれた。そして僕はディオネ様たちが居る所に戻された。

「もしもアイネさんがワールドオーナーにならないならあの世界を、そこに住む人も含めてすべて破壊すると脅迫します!」

「アフロディテ......そこまで落ちたのですか?」

 ディオネ様は僕の頬をつつきながらアフロディテを睨みつけた。

「......っていつまでつついているの!?」

 僕は動けないので振り払うこともできずつつかれるしかないのだけれど。

「え? いつまでって......まだ1分もつついてないじゃないですか?」

 ディオネ様は不思議そうな顔をして首を傾げる。

 ......そうか僕が未来の可能性とやらを見せられている間時間が経過していなかったのか!? というか何分つつくつもりなのだろうかこの女神様は?

「30分くらいはつつきたい柔らかさですね」

「いや、長すぎるから!」

 僕の考えを読んで答えたディオネ様に僕はすかさず突っ込みを入れた。

「そろそろ続きを話していいですか?」

 おっと......アフロディテはこのコントが終わるのを待ってくれていたようだ。

「あ、はい......どうぞ」

 何か申し訳なくなって敬語で返してしまった。主人公的には激昂して世界を破壊するなんて許せないぞ的なことを言うべきなんだろうけど......

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