第367話 使い捨てキャラじゃなかったんだね

 光が消えると僕はおなじみの僕の部屋のベッドの上にいた。つまり僕が姫様として生活をしていたあの世界にいるのだ。この部屋にはディオネ様をはじめ、僕以外に誰も居ない。

「やられた! この世界に戻された!」

 僕は悔しくて枕を1回殴りつけた。

「姫様、そのようなことをされてはなりません」

 声の方を見るとメイド長が立って......え? メイド長?

「何でメイド長がここに!?」

「姫様が目を覚ませば横に控えるのは当然のことです」

 いや確かにメイド長がいきなり現れたことに驚き......はしないか。メイド長だもんね。

「いや、そうじゃなくてメイド長はワールドオーナーで能力殺しの短剣で刺されたから3日くらい下痢になっているはずじゃ?」

「その件でしたらもう1週間も前の話です。今は体調万全ですのでご安心ください。もちろんワールドオーナーの力もありません」

 結局下痢になってたのかよ!? と言うことはディオネ様の言っていたことは本当だったんだ......

「本日の予定は、国王様と王妃様がこちらにお越しになります。例のマスカット王子の件もお話しされてはいかがでしょうか?」

 メイド長は手帳を開きながら説明した。

 ......というかマスカット王子って使い捨てキャラじゃなかったの? なんでこのタイミングで......いやいやそうじゃなくて僕は死後の国に早く戻らないと!

「ごめんメイド長今日の予定はキャンセル! 僕にはやるべきことが......」

 僕は自分で言っている最中に気づいた。どうやってこの世界から抜け出せるのだろう? ワールドオーナーが居ない以上この世界の出入りは自由のはず......とは言え出入りするためには女神の力が必要なわけだ。今の状況で僕は何もできない......無力な存在なのだと実感じた。

「いや、やっぱりキャンセルはなしで」

 僕は諦めたように吐き捨てた。

「はい。承知しました。では、着替えをしましょう」

 僕はこの後メイド長に着替えをさせられて国王様と王妃様の到着を待つのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る