第365話 これ、絶体絶命じゃない?

「問題だと? 大ありに決まっているだろ! 人間を何だと思っている!?」

 メルダリンは再び剣を強く握り今度はアフロディテの横腹めがけて切りかかる。

「剣は存在しなかったことにします」

 アフロディテは軽くメリダリンの持つ剣を人差し指で触れると光の粒となって霧散していった。

 これはワールドオーナーのメイド長がやっていたことと似ている? もしかして......

「まさか......ワールドオーナーの力まで使えるの?」

「良いところに気づきましたね。女神長の指輪を持っている者はこの世界のワールドオーナーみたいな存在なのです、よ!」

 アフロディテは僕の質問に答えながらメルダリンに鋭い蹴りを入れて吹っ飛ばした。

 僕は唖然としながらそれを眺めるしかなかったが、とりあえずまずは突っ込みを入れなければならないよね!

「ちょっと待って......ディオネ様! ワールドオーナーの力が使えるなんて聞いてないよ!」

「あれ? 言いませんでしたっけ? でもここまで来たらそんなこと言っている場合じゃないですよ! さあ、頑張って倒しましょう! フレー! フレー!」

 ディオネ様はチアガールみたいな衣装を着て踊り始めた。

 女神は女神に攻撃できないから人ごとだと思ってとか、どこからそんなチア衣装を用意したんだよとか突っ込みたいけど......今はそれどころじゃないから我慢してあげよう。

「先輩、ちょっと馬鹿になったんじゃないですか? いくら束になろうとも絶対に私を倒せないことも理解できないのですか?」

 アフロディテは人を小馬鹿にしたような顔でディオネ様のことを見下していた。その態度を見てディオネ様は憤慨したように反論する。

「馬鹿とは何ですか! 私だっていろいろ準備してここに来たんです!」

「そうですか。じゃあ無駄でしたね......ここに居る者は動くことを禁止する。ただし目と口は動かすことを許可する......見たり、話したりできないと小説として成り立ちませんからね」

 アフロディテ、微妙な優しさを見せてくれてありがとう......えっと、とりあえず現状報告するけど見渡す限り他の人も体が硬直したように動けなくなっているようだ。

「ほんとに動けなくなったんですか? 実は私はこの力使ったことがなかったので念のため確認させてください」

 ディオネ様は僕の体をツンツンとつついている。女神なのでどうやらこの能力の影響はないらしい。というか僕で実験するのやめて欲しいんだけど!

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