第364話 剥がされた仮面

「そこで私はディオネ様の発想をもっと有用に活用する方法を思いついたのです。だったら死んだ人の希望者すべてに能力を与えたらいいのではと考えました。日本の小説、漫画やアニメなどでは死んだら女神様から能力をもらって異世界に行くというブームになってますから実際受け入れ、喜ばれる方も多かったですよ」

 先ほどまで黙っていたアフロディテが話に割り込んできた。

「そんなこと許されるか!? 人間に能力なんて与えていいわけないだろ!」

 メルダリンは手を振り払うようにしてアフロディテを否定した......って能力を与えたのはディオネ様も同じでは?

「ところで能力を貰わなかった人たちはどうしたのですか?」

「先輩、急にどうしたんですか? この世界の設定なら1話に書かれていますけどまあいいでしょう。初期の設定ですから復習の意味でもお教えしましょう。能力を貰わない方は天国で肉体を持たずのんびり暮らすか記憶も何もかも忘れてリセットして初めからやり直すのどちらかを選んでもらっています」

 意外なディオネ様の質問に分りきった答えを答えるようにアフロディテは話した。

 ......というか1話とか言い方的にありなのこの世界? まあ読者に配慮した言い方で助かるけどさ。

「天国? そんな曖昧な言い方をするのはやめなさい。それに記憶も何もかも忘れてリセットした後、生まれ変わらせているのかちゃんと説明しなさい!」

 ディオネ様は疑うような眼差しでアフロディテを睨みつける。対してアフロディテは両手で頭を押さえて首を振る。

「ああ、もううるさいな......そんなことはどうでもいいんですよ! 私は人間どもの願いをかなえた優しい女神様なんですよ......それでいいじゃないですか?」

 さっきまでの穏やかで友好的な態度だったアフロディテの様子が変わっていく。その様子は女神と言うより悪魔を目の前にしているような感じだ。

 ......というか何でも聞けみたいな態度だったくせにこの質問には答えないのかよ。

「お前がやっていることは知っている。天国などではなく女神界で魂の牢獄に縛り付けているのだろう? それに記憶をリセットした人たちは能力を与えずに異世界に転生させているのだろう?」

「なるほど......すでに調査済みってことですか......そうですよ、人間どもを管理しやすいように私の管理下に置いている......それが何か問題でもあるのですか?」

 メルダリンの言葉に冷たい目をしたアフロディテが答える。この目はあの時のダイスケを死よりも恐ろしい目に合せたあの時の女神の目そのものだった。

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