第363話 女神界の事情

幸福ユーフォリア計画について話す前に今までの女神事情についてお話しましょう。先輩、説明お願いします!」

「いや、何でですか!? あなたがさっき説明するって言ったじゃないですか!?」

 アフロディテは当然のように話を振ってきたので、ディオネ様はすかさず突っ込みを入れる。おや? これは突っ込み要員に......ってもうすぐラスボス戦になるから今更か......

 僕は仕方ないので肩を落として話の続きに集中する。

「ま、ま! ほら先輩の方が年寄......じゃなくて経験が長いので説明も上手じゃないですか?」

「今年寄りとか言いかけなかった?」

 ジト目でディオネ様が見つめていると分かりやすいくらいに視線を逸らしてアフロディテが呟く。

「い、言ってませんよ」

「はぁ.......まあいいでしょう。元々女神が人間に対して能力を貸し与えるようなことは行っていなかったのです。その理由は人間が人知を超えた力を持ってしまえば、大抵の人間は扱いきれず自分自身や周囲の人間に危害を加えることになりますからね」

 ディオネ様の言っていることは何となく分かる。イメージとしては訓練をしていない一般人にいきなり銃を与えるようなものかな? もっとも与えるのは銃よりも強力なものなのだからそのリスクも当然大きくなるのは言うまでもない。

「大体そのイメージで合っていると思いますよ。ただ、お恥ずかしながらそうも言っていられない事情が女神界にもありまして......」

 ディオネ様が目線を下に落とした。きっとよほどどうしようもない事情なのだろう。ここは聞いておいた方がいいだろう。

「その事情とは?」

「女神の仕事って残業多いし、面白くないし、給料安いしってことで女神手不足だったんですよ!」

「え? 何それ? 笑えばいいの? ちょっと待って......ということはつまり......」

 僕はディオネ様の方に手をかざして頭を押さえながら考えを整理する。

 ええっと......この先の展開は何となく予想できるぞ。女神の手が足りないなら人間の手を借りればいいじゃない? おそらくそんなところだろう......

「そう! 正解です! と言うことで限られたごく一部の人間に女神の仕事を手伝ってもらうことにしました!」

 ディオネ様は僕の考えを読み取って嬉しそうに親指と人差し指で丸を作っていた。

 ......できれば外れて欲しい予想が見事に当たってしまったよ。

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