最終章 僕たちの選ぶ未来

第356話 アスカの作戦

「アスカも短剣持ってたんだね? アスカが居てくれて助かったよ」

 僕は世間話でもするようにアスカに話しかけた。

「ああさっきのですか? 違いますよ。あれは姫様の持っていた短剣を借りて使っただけですよ。ほら、私って本物そっくりのレプリカを作る力と物体の位置を入れ替える力持っているじゃないですか?」

 いや......初耳なんだけど? というか今の話を聞いて初めてアスカが異世界転移者だって知ったんだけど?

 と、突っ込みを入れると話がずれて長くなりそうなのでとりあえず話を聞くことにした。

「それで以前にほら......雪山で姫様があの忍者と話をしてたのを聞いてたんですけどそこで閃いたんですよ! もし姫様が短剣を使うのを失敗したら私がレプリカを作って姫様の本物の位置を入れ替える。その後にメイド長のそばにある石と私の位置を入れ替える......そうすれば油断したメイド長を出しぬけるかなって思ったんですよ!」

 いつものポンコツっぷりはどこにいったんだろうかと思えるほど作戦通りにできているじゃないか!? というか僕が失敗した時を予想しての作戦とか......アスカのくせに生意気じゃないか。

 そんなことを考えていたら僕は自然と笑みを漏らしてしまった。

「それじゃあ話も終わったところでそろそろいいッスか?」

 岩の上に退屈そうに座っている......忍者。そう、以前に僕の家に忍び込んで来て、ワールドオーナーを倒すように言ってきたあの忍者だ。

「ディオネ様! ご無事でしたか!!」

 メルダリンはその忍者を見て叫んだ。

 ......ディオネ様? え? 誰が? まさかこのアホっぽい忍者が......?

「ええっと......とりあえず今はアイネ君とでも呼んでおきましょうか。アイネ君......君失礼なこと考えていませんか? 私でも怒るときは怒りますよ?」

 忍者は怖いくらいの笑顔で僕の方を振り向いた。

 しかも、今回は早々に「ッス」で話すのはもうやめたようだね。

「まあいいでしょう。この姿だからそう思ったということにしてあげましょう。もう姿を隠す必要もないですし元に戻りましょう」

 忍者の体が光り出す。しばらく輝いた後、その姿があらわになる。僕が死ぬ前に会った肌の白い女性のあの姿になった。

「それじゃあ、女神の世界へ......行きましょう!」

 忍者......あ、いやもうディオネ様の姿だったね。ディオネ様が右手を振りかざすと僕たちは光の中に包まれた。

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