第355話 これで最後にします

「さてどうしようかな?」

 ユウは冷汗を流しながらメイド長の動きを細かく観察しているようだ。

「あなたでは勝てません。今降伏するなら排除しないと約束しましょう」

 一方メイド長は余裕が見える。絶対的な自信があるようだ。

「そんなボロボロの体で余裕だな!」

 メルダリンはメイド長の不意を突いて背後から剣を振りかざした。しかし、メイド長は人差し指と中指で挟んで受け止めた。

「はっきり言って普通に戦ってもあなた方に勝ち目はありません。それにボロボロの体もこうすれば問題ありません......私自身の怪我はなかったことにする」

 メイド長はマロン姫にやられた傷が見る見るうちになくなっていった。

 能力なしでもメイド長強すぎるじゃないか......はっきり言って何か策でもないと勝つ可能性はないと言っていいだろう。

「どうやって勝つつもりなの?」

「え? 今考え中かな?」

 僕の質問にユウが苦笑いをしながら答える。

 ......って策なしかよ!! と言うことは誰もメイド長は止められない。つまりまたあのお見合い生活に逆戻り......か。

「では終わりにしましょう。2人を痴呆に......」

 メイド長が言葉を途中で止めた!? 一体何が!?

 僕がメイド長の方をよく見るとアスカがいつの間にかメイド長背後に居て、その手にはなんと能力殺しの短剣を持っていたのだ。そしてその刃はメイド長にしっかり刺さっていた。

「メイド長、すみません! でもこれでご迷惑をかけるのも最後にしますから」

 アスカは短剣から手を放し、両手を合わせてお辞儀していた。そしてその短剣はメイド長に吸い込まれるように消えていく。

「うっ......これは!?」

 メイド長の顔が一気に青ざめる。そして目にもとまらぬ速さでどこかに走り去って行った......多分トイレだろうけど。

「姫様、これでこの世界から脱出できますよ」

 アスカは嬉しそうにニコニコしている。

「いやいや......ちょっと待って......何で今回だけ有能な働きをしているんだよ!?」

 僕は頭を抱えて首を振りながら突っ込みを入れた。

「え? 何言っているんですか! 私はいつだって有能だったじゃないですか!?」

 真顔で首を傾げるアスカ。この子は本気で言っているようだ......

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