第352話 与えられた役割
戦っている感じがしないメイド長を見て僕はあることに気づいた。
さっきのニオベとの戦いと違ってこっちの話を聞く気がないわけじゃないから、もしかしたら僕たちを殺すのをやめてくれるかもしれない。
「あのさ、メイド長! お願いが......」
「それはなかなかいい発想ですね」
まだ質問していないのにメイド長が返事をする。周りの人たちは何のことか分らずきょとんとした表情を浮かべる。
......質問する前に答えたら読者は僕の考えを読んでもらっているから伝わったとしても、この場に居る人たちには全く伝わらないじゃないか!
「姫様は先ほど私を説得してあなた方を殺すのをやめさせようと考えておりました」
おっと......まさかメイド長はここに居る人たちにまで親切に解説を始めてくれたよ! 読者だけじゃなくて敵にも優しいとか......なめられているだけじゃないだろうか?
「いえ、そんなことはありません。そもそも私はあなた方を敵だと思っておりませんし、そもそも殺すつもりもありません。ニオベ様の言葉で私があなた方を殺そうとしていると......そう勘違いされただけではないのでしょうか?」
「え?」
僕はメイド長の言葉に頭の理解が追いつかず声を漏らした。
いや待て......だとすればこれは僕にとって願ってもいない好機。お願いすればこの世界から脱出も......
「それはダメです。姫様には今後もお見合いをしていただく必要がありますので」
えぇ!? ......メイド長はこの期に及んでまだお見合いをさせようとするのか......とりあえずこの件は保留にして質問を変えよう。
「だったら何でワールドオーナーなんかやっているの?」
「その質問はおかしいですね......私はワールドオーナーという役割を与えられたから、ワールドオーナーをやっているのです。しかし、理解するのも難しいかもしれませんね......姫様は前世では学生でしたね? ならなぜ学生をやっているのですか?」
メイド長に尋ねられて僕は何て答えればいいのか分らなかった。
大学へ進むため? 中卒で仕事をしたくなかったから? 美術部を続けたかったから? うーん......どれもしっくりこない。
「姫様、難しく考える必要はありません......高校生になったからではありませんか? 社会的に高校生という役割を与えられたので学生をやっていた......こう考えるのがシンプルでしょう」
メイド長の言葉はしっくりきた。
高校生になったから学生の本分である勉強もするし、部活もする。友達だってたくさん......作れなかったけど......ってそんなことはどっちでもいいんだよ!
「私はこの世界で与えられたからメイド長という役割を......そしてワールドオーナーとしての役割を忠実に行っているだけなのです」
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