第351話 書き換える力

「ありがとうございます、姫様......あなたの持つ能力殺しの短剣をどうやって破壊しようかずっと考えていたのです。その短剣だけはワールドオーナーの能力でも消滅させることができませんでしたから......でも、こうも簡単に破壊させてもらえるとは思いませんでしたよ」

 そうか......以前に僕が短剣を貰ってから何度か短剣のことを考えたことも筒抜けだったんだ。だからメイド長はずっと破壊する機会を狙っていたのか......

「どけ! 女神の後に登場するワールドオーナーなんて役不足なんだよ! 武器生成!」

 メルダリンは周りに居たユウたちを押しのけて前に出た。そして銃を生成してメイド長に向けてすぐさま発砲をした。

「私に飛び道具は当たらないことにする」

 メイド長はそう呟くとメイド長の脳天めがけてまっすぐ向かってきたはずの銃の弾が外れた。

「くっ! 外したか!」

 続けてメルダリンは連続で発砲を繰り返す。しかしメイド長は微動だにしないのに1発も弾を当てることができない。

 これが......『この世界のあらゆるものの存在を書き換える能力』で弾が当たらないようにしているんだ! ......っていうか元女神のメルダリンは無駄打ちしてないで気づけよ!

「メルダリン君! ワールドオーナーの力だよ! 直接叩く! 速度100倍!」

 ユウの姿が消え一瞬でメイド長の前まで移動した。

「一気に決める! 攻撃10倍!」

 ユウは刀を鞘におさめたままメイド長の首元を狙って振り降ろした。

 そうか......ユウは気絶狙いか!

「あなたの持っているものを新聞紙にします」

 メイド長がそう言うとユウが持っている剣がふにゃりと折れ曲がった。いや......正確に言うと新聞紙の剣なんだけど......

「あはははは......剣だけに1本取られたって感じだね!」

 ユウは声をあげて笑った......って上手くないんだよ! ピンチな状況は変わってないんだよ!

「姫様、ご安心ください。私としては戦うつもりはありませんよ」

「え? どういうこと?」

 僕はメイド長の言葉に驚いて聞き返した。

「ワールドオーナーはラスボス的な存在でしょう? 読者の方も色々と気になっていることもあるでしょうから、こういう場合は私に何か質問をされてはいかがでしょうか?」

 メイド長はいつも通りの口調でアドバイスしてくれた......あれ? 戦っているんだよね?

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