第345話 実力差

「作戦はなかなか良かったぞ。私とお前では実力に差がありすぎる......故に不意をついての攻撃をするのは理にかなっている。しかし、そうまでしてもその差を埋めることはできなかったようだな」

 ニオベは手に光を纏わせ刃のようにメルダリンの首元に当てる。

「だったら......2対1ならどうかな? ダークアロー!」

 ユウは黒い矢を自身の周りに10本生成し、その矢をニオベに向けて放った。だが、避ける様子もなくニオベは不敵な笑みを浮かべてこちらを振り向いた。

『固有魔法[オートマジックカウンター]を発動します』

 システム音のような声が聞こえるとニオベの周りにバリアが貼られ、そのバリアにあたった矢はそのままユウに跳ね返ってきた。

「これは......マコト君と同じ魔法! ちょっと失礼するよ!」

 ユウは僕を脇に抱えて飛び退いた。

「残念だったな。それも無駄だ......私への攻撃魔法はすべて反射するからな。少し待ってろ......女神への攻撃の罪はお前の命で償ってもらう」

 ニオベは再びメルダリンの方を向き直し、その首元に刃の先端を向け狙いを定める。

「ちょっと待つにゃ! 今、マコト君って言わなかったかにゃ?」

 タマはユウの腕を強く掴んで険しい顔で詰め寄ってきた。

「え? 言ったけど......このピンチな状況の時にわざわざ聞かなくても......」

 ユウは困ったような顔でタマに言い聞かせた。

「私にとっては最重要事項なのにゃ! 詳しい話しを聞かせてもらうにゃ!」

 タマは腕を引っ張って連れて行こうとする。

「いや、敵が目の間に居るんだよ! さすがにそんなことしている余裕は......え? 何してんの?」

 ユウはニオベの方を振り向いて唖然としていた。なぜならメルダリンへの攻撃の手を休めお茶を飲んでいたのだ。

「大事な話をする雰囲気だったから少し待ってやろうと思ってな。もしかしたらタマの探し人について聞きたい読者もいるかもしれないだろ?」

 なぜかこんな状況でも読者サービスを忘れないニオベ。やっていることはかなりの悪人なのに何でこんな時だけ優しいんだよ!

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