第333話 え? 女の子じゃないんですか?
「ダイスケを助ける方法はあるのか?」
『助ける? ふふふ......やはり君はそう言ってくれると思っていました』
ディオネ様は僕の考えなどお見通しなのか笑って返してきた。
「もったいつけてないで助ける方法があるなら早く教えてよ」
『まあまあ......焦らない焦らない。彼を助けるためには私が女神長の力を取り戻す必要があります』
女神長の力? もしかしてあの時奪われた指輪のことかな?
「そうか! じゃあ頑張って取り戻してね!」
僕はそう言って画板に置かれた真っ白い紙の前に再び座る。
さて、コンクールに出す作品を完成させないとな......
『ちょっと! それができればあなたのところに来るわけないじゃないですか! 全く! 常識ないにもほどがありますよ!』
この女神は何を言っているんだ? 女神とか転生とか能力とか既に僕の常識にはないことばかり起きているのに今更常識とか言われても......
「じゃあ僕に何をさせたいんだよ?」
『私では“ラノベ主人公”の能力を持つ彼を倒すことはできません。ですがそれに対抗する能力......“乙女ゲー主人公”の能力を人間の女の子に与えれば彼に対抗できます! ということで女の子の君に能力をあげますから私と一緒に戦ってください!』
ディオネ様は得意げに話を......あれ? 何かおかしくない?
「ちょっと待って......今、女の子にって言ったよね? 何で僕に与えるの?」
『え? 女の子じゃないんですか?』
「ちっがうよ!! 見て! この制服! 男子の制服でしょ! しかもこの僕からあふれんばかりの男気! どっからどう見ても男子でしょうが!!」
僕の言葉にディオネ様は首を傾げる。
『あふれんばかりの男気? いえ......微塵も感じませんけど?』
「と、とにかく僕は男子だから間違えないで!」
納得していないディオネ様に強引に僕を男子だと認めさせた。
『えぇ!? 女の子じゃないんですか!? まずいですね......それじゃあこの能力使えないじゃないですか......』
「とりあえず。その能力とやらについて詳しく教えてもらえるかな?」
僕はこの後“ラノベ主人公”や“乙女ゲー主人公”の能力、ついでに死後の世界について聞いた。
「あのさ......気になったんだけど、その異世界転生とやらをすれば性別も変えられたりしないの?」
『はっ!? その手がありますね! でも......転生するためには1度死ななければなりませんよ?』
ディオネ様は恐る恐る僕に尋ねた。
「うん。じゃあ1度死ぬよ」
『本当に後悔はしないのですか? その選択は君にとってとても残酷な選択になるのですよ?』
僕は少しだけ笑みを漏らしてこう答えた。
「あいつを助けるにはそれしか方法がないんでしょ? だったら何も迷う必要はないさ。それに今の話を聞いていいことを思いついたよ......読者のみんなにはまだ秘密にするけどこういう作戦さ」
僕はディオネ様の耳元でその作戦を伝えた。
『アハハハ、君は本当に面白いことを考えますね。君が女の子になればその作戦通りきっとうまくいくでしょう』
「じゃあ後のことは頼んだよ。ところであんたの名前を聞いていなかったね......何て名前なの?」
僕は目の前の女性に問いかけた。
『私の名前はディオネ。女神です』
そして僕はこの後、先ほどのディオネ様とのやり取りの記憶を改ざんしてもらった上で、心臓発作ということにしてもらって死んだのだった。
◇ ◇ ◇
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