第332話 裏切りの女神
『もちろんです。本来1度死んだ人間は生き返ることはできませんが、あなたの今回の働きを評価して生き返らせることとしましょう』
ディオネ様はダイスケにニッコリとほほ笑んだ。
「おめでとう! ダイスケ君! これで......やっとこの茶番を終わりにできるわ......」
その場にもう1人いた少女の右腕はダイスケの体を貫いた。
「な、ぜ......これは......どういうことだ?」
ダイスケは口から血を流して少女を睨んだ。
「アフロディテ様......その体は俺の新しい体になるんですから傷つけないでくださいよ」
少年が暗がりからゆっくりとこちらに歩いて来る。
「大丈夫よ......これくらいの傷なら女神の力をもってすれば簡単に治せるから心配ないわ」
『これは......どういうことなの? 説明なさい! アフロディテ!』
ディオネ様はその少女......アフロディテの肩を激しく掴んだ。
「ディオネ様の生ぬるいやり方に飽き飽きしたのでそろそろ女神長の座を貰おうと思いましてね......ヒロトやりなさい」
アフロディテは少年......ヒロトに命令した。
「......覚醒能力『ラノベ主人公』」
ヒロトがディオネ様を見ると彼女の体が硬直したように動かなくなった。
「女神長の指輪を渡してもらえますか?」
『はい、喜んで......』
ディオネ様は自分の指から指輪をはずすとヒロトの掌の上に置いた。
「アフロディテ様、その男の魂はどうするんですか?」
ヒロトは指輪をアフロディテに手渡した。
「そうね......折角だから異世界のゴキブリにでも転生させて生き返らせてあげようかしら、約束通りね......だって誰も人間に生き返らせるなんて言ってないわよね?」
「そんな......俺は......」
絶望の眼でそう言い残したダイスケの体は光に包まれる。そしてその光がなくなった後、ダイスケの体は抜けがらのようにぐったりとしていた。
◆ ◆ ◆
『で、そのあと一瞬の隙をついて私は彼らから逃げたのよ』
「逃げたところだけは口頭説明なのかよ......」
僕は呆れたような目でディオネ様のことを見た。
『だって私が見てないところは映像にできないわよ!』
頬をふくらませてディオネ様は反論した。
こんな映像を見せられるってことはこの人は人間じゃない。女神......とか呼ばれてたな。
「今の映像......本当に起こったことなんだね?」
『はい。その通りです』
僕は奥歯を強くかみしめることしかできなかった。
そうか......1度目はこの時だ。僕の親友を死よりも辛い思いをさせたあいつに対するこの感情だ。
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