第331話 僕の親友
砕けた記憶の断片がつなぎ合さり、ようやく僕は本当の過去を思い出した。
それは僕がアイネ姫になる前のこと......前世の話に付き合ってもらえるかな?
◇ ◇ ◇
今日は38度を超える真夏日にも関わらず野球部が校庭を走り回っている。
「こんなクソ暑い日に全くご苦労なことだね」
こんな暑い日にまで自分の体をいじめ続けるなんてドMだね。全く理解できないよ......え? お前は何をしているのかって? そりゃクーラーの効いた美術室で涼みながら僕は新しい作品を作っている最中だよ。
僕の目の前には真っ白い紙が画板の上に置かれている。
「いや......違うからね! さぼっていたんじゃなくて構想を練っていただけだからね!」
『アハハハ、君は誰に言い訳をしているんですか?』
「誰!?」
部員は僕1人しかおらず、顧問は教師を首にならないのが不思議なくらい毎日合コン三昧でまず部活に来るなどということはない。しかも部室は廊下の突き当たりとくれば誰もここに来るはずがない。なのに声をかけられて僕は驚いて振り向いた。
そこには肌の白い女性が立っていた。後から知ったけどここではディオネ様と呼んであげよう。
『私は......』
ディオネ様は口を開こうとしたところで僕は焦りながらスマホを取り出した。
「大変だ! 不審者が学校の中に居る! 早く警察を呼ばなきゃ!」
『ちょっと! 私のどこが怪しいんですか! 失礼な人ですね! 訴えますよ!』
ディオネ様は僕のスマホを取り上げた。
「くっ......なんて恐ろしい不審者だ! 連絡手段を奪うなんて!」
『......ってまだ私は不審者なんですか!?』
「当り前だよ! 教師でもない大人が学校に居るなんておかしいじゃないか!」
僕はビシッと指を突き付けた。
『う......言われてみればそう言えなくもないです......いや、でも今は緊急時です。許してください!』
ディオネ様は僕の頭に触ると映像が流れ込んできた。
◆ ◆ ◆
「これで約束通り、俺のことを生き返らせてくれますか?」
少年はディオネ様に尋ねた。
この少年は......そう、僕が今助けたいと思っていた人物。そして僕の親友のダイスケだ......っていうか回想の回想に入ったんだけど!! 読者のみんな......あんまり長くならないようにするからもう少し聞いてね。
「と、ちょっとここで一時停止ね。あのさ......なんでダイスケは生き返ろうとしてるの?」
僕は回想シーンを無視してとりあえずディオネ様に質問した。
『一時停止って回想シーンにありなんですか!? ま、まあいいでしょう......一応混乱しないように説明すると、ダイスケさんは実は一度死んでいます。本来は異世界転生する予定だったんですけど、ある交換条件を達成してくれたら生き返らせると......そういう約束だったのです』
「なるほど.......じゃあ続きの回想シーンをよろしく!」
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