第330話 言葉にできない感情
「おい! バカってオレのことじゃないよな! スザクの方だよな?」
ボロボロ布のやつは少女に担がれているという情けない格好のまま騒ぐ。
「姫様がわざわざスザクの回収なんて命じるわけないだろ? お前がどうしても連れて来たいってだだこねるから連れてきたんだよ! 正真正銘お前のことだよ......バカ!」
棒付きキャンディー少女はボロボロ布のやつを乱暴にその場に落とした。
「痛てて......一応怪我人なんだからいたわってくれよ......」
ボロボロ布のやつは頭を打ったらしくわずかにたんこぶができているところをさすった。
ちょっと待て......状況を整理しよう。捕まっていたはずのボロボロ布のやつがここに居るってことは向こうはどうなったんだ? タマは? アスカは? ビャッコは? どうなったんだ!?
「おい! バカ! タマたちはどうしたんだ!」
僕は名前が分らないのでとりあえずボロボロ布のやつのことをそう呼んだ。
「誰が“バカ”だ! ......ってアイネ姫かよ! ちゃっかり便乗して“バカ”呼ばわりはやめろ!」
「いや、さっき“バカ”って呼ばれてたからそんな名前なのかと思って」
「なるほどなるほどじゃあしょうがな......ってそんなわけあるわけないだろ!! 常識で考えてそんな名前つけるやつがいるか!!」
バカ......ボロボロ布のやつは意外と突っ込みもできると......これはポイントが高いね。
「ところでタマって何だ? ネコの名前か?」
ボロボロ布のやつはタマの名前知らないんかい!!
「あそこに居た“にゃ”が語尾の少女のことだ。それぐらい調べとけバカ!」
棒付きキャンディー少女が代わりに説明を......ってなんでそっちの方が知っているんだよ!
「ああ......あいつらのことね。邪魔するやつは消す。こういう展開だとお決まりだろ?」
ボロボロ布のやつは納得したように頷いた後、冷酷な言葉を口にした。そして僕は自分の中に複雑な感情が渦巻いていることに気づいた。
何だろうこの感じは......こんな気持ちになるのはこれで『2度目』だ。あれ? 1度目はいつだっただろうか?
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