第328話 では帰りましょう

「はじめましてだな。アイネ姫」

 気づけばミニスカドレスの女性は僕のすぐそばにまで迫って来ていた。遠くからじゃ分らなかったけどこの人の身長は2メートル弱くらいあってかなりの高身長だ。

「姫様に何のご用ですか?」

 そしてそんなミニスカドレスの女性をはるかに上回る身長の持ち主であるメイド長が僕との間に割り込む。

「なに......アイネ姫には用と言うほどのことはない。強いて言えば今すぐ家に帰って欲しい......それだけだ」

 ミニスカドレスの女性は手を腰に当ててかすかに笑みを浮かべる。

「分りました。では帰りましょう。姫様」

 あれ? いつもならお見合いを中断して帰るなどと言うことは絶対にあり得ないメイド長らしからぬことを言っている?

「どうしたの? いつもなら絶対に帰ろうなんて言わないのに」

「姫様、この者の実力は私より上です。向こうに敵意がないのであれば帰る方が賢明かと思われます」

 メ、メイド長より実力が上!? そんな人間がこの世に存在するの!?

「え、えっと......でしたらこちらにはどのようなご用件で来られたのですか?」

 ナナリーが恐怖で震えながらも尋ねた。

「用件? ......まずはザックス王子を殺しに来た」

 今までも怖かったミニスカドレスの女性はザックス王子を睨んだ。

 このイケメン王子がまさかここまで恨まれることをしたのか......はっ!? もしかしてこの女性は昔手酷くザックス王子に振られたんじゃ?

 僕はザックス王子の耳元で呟く。

「ザックス王子、ここは謝った方がいいんじゃないかな? そして仲直りして結婚してあげなよ」

 別に僕の婚約者候補から外れて欲しいとかそういう裏の意図はないからね!

「アイネ姫......何を勘違いされているか分かりませんが、彼女とはそういう関係ではありません。そうですよね......マロン姫?」

 ザックス王子は目の前の女性の目をしっかり見つめ返した。

 『マロン』......? 確か最近どこかで聞いたような名前なんだけどどこだったかな?

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