第327話 間抜けの再来

 とりあえず目の前のメイドはメイド長があっさりと気絶させた。すぐそばの部屋に寝かせて僕たちは先を急ぐことにした。

 なぜ急ぐ必要があるかって? 敵も本格的に攻撃を開始してきたわけだからコロネの身に危険が及ぶ.......わけないか。コロネのそばにも人間離れしたメイドのクララさんがいるわけだし。

 いつもの僕なら『じゃあちょっと休憩してから向かおうか』とでも言いそうなのだが妙な胸騒ぎがして僕の足は小走りになりながら進んだ。


 南西の中庭に出ると驚くべき光景が目の前に広がっていた。ピンクの長髪をしたミニスカドレスの10代後半~20代前半くらいの女性が血まみれになったクララさんを踏みつけていた。

「姫様、別のお客様が登場したようです」

 鳥のお面のようなものをかぶった奇妙な男はミニスカドレスの女性を姫様と呼んだ。ミニスカドレスの女性はクララさんに興味を無くしたのか、クララさんを足蹴にしてこちらに向かって歩いてきた。

「ねえ! クララしっかりして!」

 草蔭からコロネは飛び出すとクララさんの体をさすった。

「大丈夫です......でもちょっとだけ休ませてください」

 クララさんはそう言うとそっと目を閉じた。

「クララー!! 死なないで!」

「あの......コロネ様、静かにしてもらえませんか? 眠れないじゃないですか?」

 クララさんは目を開けてそう言った後、再び目を閉じるといびきをかいて寝始めた......って緊張感なさすぎだろ! 僕も死んだのかと思ったじゃないか!!

「お久しぶりですね。アイネ姫様」

 トメが岩陰からひょっこり顔を出した。

「あ! トメ!! ところに隠れていたのか!」

 僕は現れたトメを指差した。

「大きな声で私の名前を呼ばないでもらえますか! こっちは気にしているんですから! 今回は姫様に指示で隠れていたんですよ!」

 姫様......ああ、このミニスカドレスの人か。間抜けのトメが隠れて能力を使うなんて発想ないもんね。

「トメ! お前はあいつらと知り合いなのか?」

 鳥面の男が名前の部分だけ強調して尋ねた。

「ぶっ殺されたいんですか? 焼き鳥にして食ってやりますよ?」

 トメは鳥面の男の胸ぐらをつかんで持ち上げると鳥面の男はトメの腕をギブアップのサインのように叩いた。

 ......こいつら何しに来たんだろうかと僕は思わずにはいられなかった。

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