第323話 解説役いないんだけど!

「はいはい......お見合いを続ければいいんでしょ」

 僕は諦めたように部屋の中に入った。

「イヤ......ソノヒツヨウハナイ」

 廊下の方から声が聞こえたので振り返ってみるとそこにはメイドが立っていた。そのメイドは両手をだらんと下げて長い前髪でその表情は見えないがどこか普通のメイドとは違うように見える。

「あの大丈夫ですか? 顔色悪そうに見えますけど?」

 クロワは様子のおかしいメイドに近づくとかがみこんで話しかけた。

 おや......? クロワは意外と気が回るメイドのようだ。駄目イドとか言ってごめんね!

 僕がそんなことを考えながら様子を見守っていると、様子のおかしいメイドはナイフを懐から取り出してクロワに振り下ろした。

「え? ちょっ!?」

 クロワは突然起きたことも理解できず身を守るようにして両腕を前に出した。

「姫様の目の前で死人を出させるわけにはいきませんね」

 僕の後ろに居たはずのメイド長がいつのまにかクロワの目の前に移動していた。

 しかも様子のおかしいメイドが持っていたナイフまでいつの間にか奪い取っていたのだ......え? いつの間にかじゃなくて解説して欲しいって? それは無理だね......だって解説役が......

「メイド長はナイフを握る手が一瞬緩むのを見計らって、ナイフの刃の部分を指で摘まんで抜き取っていましたアルよ」

 なぜか凜風(リンファ)が解説役をしてくれた。

「......何で解説?」

「知りたそうな顔していましたアルよ」

 ニコッとほほ笑んで凜風リンファは答えた。

 ここにいるメンバーだと見切れそうなのは凜風リンファくらいだから助かったけどさ! まさか主人でもない僕の様子を見て気持ちを察するなんて凜風リンファもかなり優秀なメイドだね......

「ジャマヲ......スルナ!」

 様子のおかしいメイドはナイフを奪い返そうとメイド長に迫った。しかし、メイド長がわずかに動いたかと思うと、様子のおかしいメイドはその場に倒れてしまった。

「今のは首元に一撃入れたアルね。見事な手際でほれぼれするアルね」

 またまた解説ありがとう凜風リンファ。でもそんなことより一体今のメイドは何だったんだろうか?

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