第312話 タイムリミット

 まさに一触即発の雰囲気だ。先に動いた方が有利なのか、相手の動きを見てから動いた方が有利なのか僕には分らない。ともかく両者とも警戒して動けずにいた。

「いったいどっちの方が勝つんだにゃ......? あえて動かないことで攻撃にも防御にも素早く動けるようにしているんだにゃ」

 タマも固唾かたずを呑んでいつになく緊張した様子を見せ......ってやっぱり解説役をやりたいのかな?

「そろそろ時間がないので終わりにしましょう」

 メイド長がいつの間にかスザクの背後に立ち首元に一撃入れるとその場に倒れ込んだ。

「え? ちょ......スザク倒しちゃったんだけど。読者のみんなはスザクとビャッコどっちが勝つんだろうワクワクみたいな感じだったのに意外すぎる展開でしょ!」

「申し訳ありません、姫様。お見合いの時間が迫っておりますので、そのような展開は今回はなしということにさせていただきます」

 メイド長がそう言って一礼した。

 ......というかこの国? 街? 一番の強さの人を一瞬で倒してしまうなんてメイド長がいれば護衛なんかいらなかったんじゃないだろうか?

「申し訳ありませんが馬をお借りします。馬車が壊れてしまいましたので代わりの足が必要ですので。王城に着きましたら救護の方をこちらに向かわせるように伝えます」

 メイド長はセイリュウが乗っていた馬に僕を乗せた後、自身も馬に乗った。

「あ、ああ......それで構わないが......」

 ビャッコは目の前で起きたことに驚きを隠せない表情で答える。

 メイド長は馬を走らせるとすぐにナナリーもゲンブが乗っていた馬に乗り着いてきた。

「ちょっと! 私は馬に乗れないんですけど! 私も連れて行って欲......」

 アスカがこっちに向かって叫んでいたが、最後の方は離れて過ぎて聞こえなくなってしまった。

 ......っていうかナナリーも当たり前のように馬に乗っているけどメイドが馬に乗れるのも一般教養なのだろうか? え? アスカはメイドじゃないのかって? それについてはノーコメントでお願いしたい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る