第310話 ふと思ったんだけど

「そんなことよりさ。ふと思ったんだけどこいつに能力を解除させればいいんじゃないかな?」

 僕は耳打ちをしながらボロボロ布のやつを指さす。

「確かにいい考えにゃ」

 そう言ってタマはナイフをボロボロ布のやつの頬に当てる。幸い他の人たちは戦いの方に集中してこちらの方を見ていないようだ。

「ちょっ......やめろ! 危ないよそんな物取り出したら! 怪我しちゃうって!」

 ボロボロ布のやつはおびえたようにな顔を見せる。

「じゃあどうすればいいか分っているよにゃ? 今すぐスザクを元に戻すにゃ」

「無理! 無理! だってオレができるのは人の心を壊すところまでで、それがオレの最大の生甲斐なのさ! 壊した心を治すとかできるわけないじゃん馬鹿なの? 分ったらオレを今すぐ解放しろ! オレはこんなところで死にたくないんだよ!!」

 タマの要求に従うつもりはないボロボロ布のやつは手をパタパタと振った。

 こいつこそ自分の置かれている状況が理解できない馬鹿なのだろうかと突っ込みをした方がいいかなと一瞬考えたけど馬鹿がうつりそうなのでやめておこう。

 ボロボロ布のやつを相手にしていてもしょうがないと思いスザクたちの方に目を向ける。

「さて、オレもそろそろ本腰を入れるとしよう。お痛をするにしてもちょっとやりすぎだぜ?」

 ビャッコは5メートルくらいの高さの巨大な岩を軽々持ち上げる。そしてそのままそれをスザクめがけてものすごい速度で投げつけた。岩の大きさからして回避は無理だろう。

 グレネードランチャーみたいに破壊力のある銃を持っていれば巨大な岩を破壊できるかもしれないけど、今のスザクはそんなものを持っている様子はなさそうだしこれで......ってあんなの食らったスザク死んだりしないだろうか?

 しかし、僕の心配を裏切るような出来事が起きた。スザクは片手で扱うような銃を巨大な岩に向けて発砲するとなんとその岩は粉々に砕け散ったのだ。

「さあ、出番だねタマ」

 解説役を買ってくれたタマの方を見る。

「分らないのにゃ」

 どうやらタマは中途半端な解説役にしかならないようだ。やっぱり突っ込み要員の方が向いているのかもしれないな。

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