第305話 虚構の世界
「神だと? ふざけているのか?」
アーロンは空を睨んだ。
「まあ聞け。私の正体より、この世界のことが気にならないかね?」
天の声っぽいボロボロ布のやつがしゃべりかける。
「......気にならないと言えば嘘になるな。だが、知る方法がない以上それを気にしても仕方がない」
アーロンは腕を組んで答えた。
「いや......私は神だからこの後起こったことを再現することができるのさ。その目で確かめるといい......」
天の声っぽいボロボロ布のやつがそう言うと止まった人たちが動き出した。
「あねさん、やりましたね。人質はどうするんですか?」
少女に銃を向けた男が尋ねた。
「殺しちまいな」
「え?」
あねさんと呼ばれた女の言葉に男は困惑したような表情を浮かべた。
「殺さないと約束した男は死んだんだよ? 死んだ相手との約束をあたしらが守る必要なんてないじゃないのさ」
あねさんと呼ばれた女は冷酷な目つきで男を見た。
「おい......やめろ!!」
アーロンは男の方に触れようとしたが触れず、すり抜けてしまった。
「な、なんだと.....」
「アーロン君、君はこの世界ではもう死んでいるんだよ? 残念だがこの世界に干渉できはしないのさ」
アーロンが戸惑いの表情を浮かべているところに天の声っぽいボロボロ布が説明をした。
「あれは嘘だにゃ。ここは記憶の世界にゃから干渉できないはずがないのにゃ。おそらくさっきので私たちと同じくこの世界に干渉できなくしたのにゃ。それに今見ている光景もおかしいのにゃ。ところどころノイズがかかっているのにゃから多分これは虚構の世界......つまりやつが作り出した偽りの記憶と思われるのにゃ」
「なるほど......じゃあもしかして今ならアーロンとなら会話できるんじゃ?」
タマの発言に僕は少し頭を悩ませて呟いた。
いやでも......まさかそんな間抜けなことはしないか。
「タンマ! タンマ! それ反則だろ!」
ボロボロ布のやつが僕たちの前に姿を見せて両手を前に出した。
「(......って本当にできるのかよ!! あれ? 声が出ない?)」
声を出させなくするなんて突っ込み役に対してなんて恐ろしいことをするんだ!
僕がそんなことを考えている隙にタマはすかさずナイフで切り裂こうとするがまたもボロボロ布のやつに逃げられた。
間抜けなくせに逃走技術だけはなかなかのものだ......って感心している場合じゃない!!
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