第302話 言わなきゃ伝わらないこともある

「あねさん、よく見りゃこいつ武器持ってないみたいです。やっちまいましょう!」

 男が後ろから銃を構えながら近づいてきた。

「やめな。あんたじゃこいつには敵わないよ」

「大丈夫です。すぐに終わるのでちょっと待っててください」

 あねさんと呼ばれた女の制止も聞かず男はアーロンに銃を向ける。すると僕は驚くべき光景を目にした。

 えっと......それを今から説明したいんだけど正直僕にもよく理解できていないんだ。気づいた時には男は銃口を自分のこめかみに発砲して死んでいたんだ。何を言っているか分らないと思うけどこれがさっき起きたことなんだけど......あ!

「そうだ! こんな時こそタマの出番だ!」

 僕は手のひらにポンと拳を作って叩いた。

「いや......急に『こんな時こそ』と急に言われても分らないんだけどにゃ......」

 タマは呆れたような目で僕を見た。

 おっとメイド長のみたいに僕の思っていることを察してはくれないか......いやまあそっちの方が普通なんだけどさ。

「今さっき何が起きたか説明して欲しいんだけど」

「めんどくさいにゃ」

 タマは手を横に振って僕の提案を断った。

「ほら、読者も何が起きているか分らないと困るしさ」

「む......そういうことならしょうがないにゃ」

 おや? 意外と読者相手ならタマは親切になるようだ。

「あれをよく見るにゃ。アーロンも男のそばに移動しているにゃ。あれはアーロンが発砲する一瞬で男の頭に銃を腕ごと移動させたのにゃ。だからあんな自殺したような死に方になっているのにゃ」

 今更だけどアーロンがすごいのは言うまでもないけどタマもそんな動きが見えるなんてすごいよね......

 タマに説明されて僕は分ったけど敵兵たちは何が起きたか分らず恐怖の冷汗を流していた。

「お前たち分っただろ? こいつは人間殺りく兵器みたいなもんさ。うかつに近づくんじゃないよ」

 あねさんと呼ばれた女は後ろを振り向き怯えている兵士に声をかけた。

「その子を離せ!」

 アーロンは少女に銃を突き付けている男を睨んだ。

 あねさんと呼ばれた女は銃をアーロンの足下に放った。

「そいつはあんた次第だね。そいつを使って自害してくれるのなら今生きている人間は見逃してやってもいいよ。もう若い女はみんな殺したし。女とは言えションベン臭いガキなんてあたしの敵にならないから見逃してやってもいいよ」

 あねさんと呼ばれた女は先ほど放った銃を指差した。

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