第301話 最強キャラが登場したようだ

 アーロンに着いて行った先で住民を人質に取っている敵兵たちが見えた。住人の何人かは抵抗をしたのか血を流して倒れているのが見える。

「そこで止まれ!!」

 敵兵の1人が先ほどの少女のこめかみに銃口を突き付けてアーロンに止まるように命令した。そして、アーロンも言われた通りその場で止まる。

「よーし! いいぞそこで止まれ! あねさん! 準備できました!」

 敵兵は少女に銃口を突き付けたまま後ろを振り返り誰かを呼んだ。

「お前たち下がりな......」

 あねさんと呼ばれた女はゆっくりとその巨体を揺らしてこちらに近づいてきた。顔は豚鼻、出っ歯、極太眉毛の3種のドブス神器を兼ね備えたこの小説史上ある意味で最強キャラが登場したのだった。

「ほう......なかなかいい男だね。こんな男を殺さなきゃいけないなんて嫌な世の中になっちまったもんだねぇ」

 あねさんと呼ばれた女は食い入るようにアーロンの体を見つめる。

「だったら見逃すって言うのはどうだ?」

 アーロンは冷静に提案をした。

「それはできないねぇ......あたしには目的があるのさ......え、何? 目的を聞きたいだって? しょうがないね......冥土の土産に聞かせてやるよ」

 あねさんと呼ばれた女は聞かれてもいないのに目的を話そうとしている。

 それにしてもどこにでも話しを聞かない人は居るんだね......

「あたしはこんなにいい女だろ? なのに全然モテないんだよ......そこで気づいちまったわけさ。若い女じゃないと相手にされないってことにね!!」

 あねさんと呼ばれた女は指を突き付けて宣言した。

「若さの問題じゃないでしょ!! と言うかその理論だとあんたは若いころモテたってことになるでしょ!!」

 僕はすかさず突っ込みを入れた。

 なんだか久しぶりの突っ込みを入れたような気がする。やっぱりボケ役よりこっちの方がしっくりくるね。

「何やっているのにゃ? この世界に干渉できないんにゃから突っ込みは意味をなさないのにゃ」

 タマは呆れたように僕を見た。

 そ、そう言えばそうだった......僕の突っ込みは虚しくスルーされるわけか......

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る