第299話 刹那

 アーロンに着いて行くと目の前には銃を持った兵士や戦車が迫ってきているのが見える。さっきは約1000人とか言ってたけど目視できるだけでももっとたくさんいるのがこの場所からでも分かる。

「アーロンさん、ああ......良かった。これで私たちは助かるかもしれません」

 アーロンを見つけて先に来ていた兵士が胸をなでおろした。

「状況は?」

 アーロンはその兵士に近づき尋ねた。

「こちらので戦えるのはアーロンさんを含めて10人です。対してあちらの戦力は見ての通りです」

 そう言って兵士は目の前を指差した。

 誰が見ても一目瞭然の圧倒的戦力差があるってことか......じゃあこの戦いでアーロンは死んだってことなのかな?

「なるほどな......この程度ならオレの勝ちだ。お前はどこかに隠れていろ!」

「はい! アーロンさんも気を付けて」

 アーロンの言葉に返事をした兵士は瓦礫の中から身を隠せる場所を探して身を潜めた。

「全軍! 止まれ!! 貴様はあの有名な一人軍隊のアーロンだな? なるほど......例の噂がでまかせであることを我々が証明してやろう......全軍! 撃ち方用意!! 撃......」

 敵のリーダーと思われる男が自身の髭を指で触りながら後ろの兵士たちに命令を出したが言葉を途中で止めた。いや止めたというよりは止めさせられたのだ、そうアーロンその場に居た誰にも反応できない速度でその男の息の根を止めたのだ。

「あのさ......ちょっといいかな?」

「何なのにゃ? 今いいところにゃんだけど?」

 僕が話しかけるとタマが不機嫌そうに振り向く。

「これギャグ小説なんだけど人死出しちゃって大丈夫かな?」

「くだらないことで話しかけるんじゃないにゃ! ギャグのお話だって人死が出ることもあるにゃ!! あと私に突っ込ませるの止めて欲しいにゃ!!」

 読者の人に僕やタマが居ないと思われるかもしれないから会話シーンをせっかく作ったのにタマのお気に召さなかったようだ。それにタマは突っ込みをするのはあまり好きじゃないようだ。自分の能力が突っ込みで解除されるのとか関係あるのかな? ......そんなのどうでもいいか!

「き、貴様! よくも上官を! 皆、上官の仇を......え?」

 そう叫んだ兵士の左右に並ぶ兵士が次々に倒れていったのだ。そう、一瞬のうちにアーロンが放った銃弾で葬ったのだ。

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