第296話 スペイン語、分からないんだけど?
「Ayuda!!」
「Qué pasó!?」
遠くの方で話声が聞こえた......っとその前に!
「僕スペイン語分んないんだけど......ほら、僕が何言っているか理解できないと読者にも伝わらなくて困るしさ」
「全く......しょうがないやつにゃ! これでいいかにゃ?」
そう言って僕の頭にタマが触るとなんだかすっきりとした気分になった。
「よーし気分も爽快になったところで頑張ってボロボロ布のやつを探し......ってちがーう!! そうじゃなくて言葉が分らないと困るのを何とかして欲しいんだよ!!」
このポンコツ猫娘め! ごまかそうったってそうはいかないぞ!!
「何とかしたにゃ! その手に持っている新聞の切れ端を見るにゃ」
タマは僕の手に持っている紙切れを指差した。
「新聞? ええっと......『第4次世界大戦開戦』ってあれ読める?」
「分ったかにゃ? さっきこの世界でどんな言語も理解できるようにしてやったのにゃ」
「ありがとうタマ! さっき『ポンコツ猫娘』って思っちゃってごめんね!」
「そんなこと思っていたのかにゃ!! 全く失礼なやつにゃ!!」
おっと......こんなところでコントをしている場合じゃない。僕たちの身に危険が迫っているかもしれないんだ。急がないと!
「ダメだ......この子はもう......」
先ほどの話声の主の1人はうつむいて首を横に振っていた。
声の方もどうやら僕が理解できるような言葉に聞こえているようで安心したよ!
「は......ははっ......冗談だろ? こんなことしている場合じゃない......病院に、病院に行かなきゃ......」
もう1人の男はまだ小さい少女を腕に抱えて歩き出そうとする。
「残酷なことを言うようだが現実を見ろ! その子の肉体は腐敗しているじゃないか! 死後1週間は経っているのは誰だって見れば分かる!」
「オレは父親なんだよ! 父親って言うのは娘を守るものなんだ!」
そう言って少女を腕に抱えた男はその場を走り去っていった。
「何をボーっと突っ立っているにゃ? ボロボロ布の人物を早く探すんだにゃ。とりあえず記憶の持ち主の人物はさっきの走っていった男の方みたいにゃから着いていくにゃ!」
タマに急に声をかけられて僕は我に返った。
「あ、ごめん! でも何で記憶の持ち主が分かるの? あんな人近くに居なかったと思うけど......」
ま、タマがいることに気付かなかったから居なかったとは断言できないけど。
「景色が消えかかっているからにゃ。記憶の持ち主を中心とした世界にゃから、その人物が知らないことはこの世界では存在できないようにゃ。それにここは前世の記憶にゃと思うからおそらく前世の姿なんだろうにゃ」
タマの言葉を聞き周りを見ると世界にノイズがかかったようなことに気づいた。
「サブキャラっぽい登場したくせにタマって意外と役に立つね」
「大きなお世話にゃ!! そんにゃことより早く追いかけるにゃ!!」
僕とタマはさっきの男が走っていった方に向かうのだった。
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