第293話 追憶:男とお見合いする羽目に......ってそれネタバレタイトル!!

「姫様、ドレスをお持ちしました」

 別のメイドがやってきて手に綺麗な青いドレスを持っていた。

 そのドレスには見覚えがあるぞ......はっ!? この世界に来て初めて着たあのドレスじゃないか!?

 部屋の中に戻り僕の服を脱がせるメイドたち。今の僕は着替えさせられることに慣れているので今回は抵抗せず着替えさせてもらう。

 ......期待していた人たちには残念だけど、僕のお色気シーンはカットさせてもらうよ!!

 着替え終わったところでザックス王子が待っているという部屋に案内される。

「姫様をお連れしました」

 僕が部屋に入ったのと同時に白いタキシードのような服を来たザックス王子は僕に近づいてきた。

「これはアイネ姫今日もあなたはお美しい」

 目の前まで来るとザックス王子はひざまづいて僕の右手をとるとそのまま右手の甲にキスをした。

「うげぇええええ!!」

 以前にもされたことがあるけど気持ち悪いぞ! 服の着替えと違ってこればっかりは慣れないよ!!

 メイド長は体を肩に抱えて部屋の外へ向かった。

「ザックス殿下失礼します」

 メイド長は一礼をして部屋を出て隣の部屋へ入る。

「姫様!! ザックス殿下にうげぇえええはダメですよ。うげぇえええは!!」

「メイド長、アスカとナナリーのことなんだけど......」

「アスカとナナリー? 訳の分からないことを言ってごまかさないでください。緊張して気持ち悪くのは分りますけど注意してくださいね」

 やっぱりメイド長も知らないのか。

 メイド長はそう言って僕を連れて再び部屋に戻る。

「お待たせいたしました」

 メイド長は再び一礼をした。

「姫様、お食事でもいかがでしょうか?」

 テーブルのほうを見ると料理の準備がされていたので僕も席に座った。僕が座るのを見てからザックス王子は用意されたグラスを手に取る。

「姫様、これは乾杯の合図ですよ」

 メイド長が耳元でこっそり教えてくれた。

 僕もグラスを持った。

「君のその美しい瞳に乾杯」

 僕に笑顔を向けほほ笑むと、ザックス王子は軽く僕のグラスに自分の持っているグラスを当て綺麗な音を鳴らした。

 パリィイイン!!

 僕はあまりの気持ち悪さにグラスを落としてしまう。

「ひ、姫様、ザックス殿下、お怪我はありませんか!?」

 周りにいたメイドたちが僕らの様子を心配するように集まってきた。

「アイネ姫! 私にあなたに傷ができていないか確認させてください」

 ザックスはすかさず僕に近づき、顎をくいっと上げて僕の顔を見つめてきた。

「いや大丈......」

 僕の言葉を無視してザックス王子は言葉を続ける。

「君のことが心配なんです。だからせめて今だけでもそばに居させてください」

 ザックス王子......また鼻毛出てますよ!! あれ“また”? おかしいぞ......前にも同じことがあった気がする。

 しかし、僕の浮かんだ疑問よりあまりの気持ち悪さが勝り、すぐに気絶してしまった。

「「姫様ぁああああ!!」」

 最後にメイドたちの声だけが響いた。

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