第292話 悪い予感がすると大体当たるよね

 しばらく道を進んでいくといかにも怪しそうなボロボロの布を着て頭に包帯を巻いている人物が立っていた。

 ......ま、立っているだけだから横を通り過ぎればいいんだけどね。

 ということで何事もなかったかのように横を通過して行った。

「おぃいいいい!! 待たんかい!! いかにも敵キャラな雰囲気出して立っているだろが!!」

 ボロボロ布の人物はミステリアスな雰囲気と裏腹に軽い感じで突っ込みを入れる。

「あの、あの人何か僕たちに用事ありそうだから話しくらい聞いてあげたら?」

 僕は残念な登場シーンとなってしまったのでボロボロ布の人物が可哀そうだと思えたのだ。

「いえ、先ほどの盗賊団との争いもありましたので時間がありません。先を急ぎましょう」

 メイド長は僕の提案を却下した。

 ま、また機会があれば再登場してくれよ。

「......逃がすはずがないだろう?」

 ボロボロ布の人物は地面に手を置くと周りに紫色の霧のようなものが発生した。そしてたちまち僕の周りににまでその霧はやってきて辺りを包む。

「いったい何が!?」

 僕はそう言って周りを見渡した。霧のせいであまり状況が分らないが、徐々に霧が晴れていき辺りの景色も鮮明になっていく。

「......ってあれ? ここは僕の部屋?」

 あの場所から一瞬で城に戻ったってこと? これは何らかの能力を使われたことは間違いない! 調べなきゃ!

 そう思って状況をは把握するためにもすぐに部屋の外に出た。

「おはようございます。姫様」

 部屋の外にはいつも通りメイドが立っていた。

「おはよう......じゃなくて! メイド長は? アスカは? ナナリーは?」

 僕の質問に対してメイドは困ったような表情を見せたがすぐに口を開く。

「メイド長はザックス殿下とのお見合いの準備をされていますが......その『アスカ』、『ナナリー』とは一体誰のことですか?」

「いやいや誰って......一緒に働いているメイドでしょ? 全く......とぼけちゃって!」

 やれやれこれはまた忘れっぽいポンコツメイドさんだな......はっ!? アスカはあれだけドジをやらかしているんだからもしかして嫌われているのかな?

「あの、私には全く記憶にない方でして......お力になれず申し訳ありません」

 メイドは深々と頭を下げた。

 本当にアスカやナナリーのことを知らない!? 一体これはどういうことだ!?

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