第256話 本場のカレーや

 しばらくするとお皿を持ってヒナとそのメイドがやってきてテーブルに並べる。

「できたで」

 カレーのいい匂いが漂って来て食欲をそそる。

「じゃあいただき......これはカレー?」

 僕が疑問符でこう言いたくなった理由を説明しよう。カレーと言われれば普通白いご飯にカレーのルーをかけたアレを思い浮かべる人が多いだろう。しかし、目の前に現れたカレーは具なしのルーをご飯に混ぜたものの上に卵がのっている。ついでに横にはソースが置いてある。

「何言うてるん? これが本場大阪のカレーやん!」

 ヒナはもはや異世界転移者であることを隠す気がないのか大阪という地名まで出しちゃったよ。いや......正確にはまだヒナが異世界転移者と確定してないけど確実だよね?

 ヒナはソースをそのカレーにかけて卵と一緒にご飯と混ぜる。食べ方に困惑していたパーティー参加者もそれを見て同じように食べ始めると「おいしいわ」という声があたりから聞こえた。

「おっと僕も食べないと......うん! おいしいな!」

 ヒナが自信たっぷりで作り始めただけあって当家のシェフに引けを取らない出来栄えだ。

 あまりのおいしさに僕は箸が進みすぐに完食してしまった。え? 箸で食べたのかって? 使ったのはスプーンだよ! こういう時は箸が進むって言うんだから見逃してね!

 僕は作ってくれたヒナに「おいしかったよ、ありがとう」と言った後にあることに気づいた。

「あれ? タマが居ない?」

「そうやな。うちも姿を見てへん」

 僕はヒナと一緒にきょろきょろする。やっぱりどこにも姿が見えない。

「タマちゃんなら帰ったわよ。何でも急用があるらしいわ。そうそう......これをアイネちゃんにってタマちゃんから預かってたの」

 サーシャさんは手に持っている封筒を僕に渡した。僕は受取りその封筒の中から紙きれを取り出し確認する。


 ┌――――――――――――――――――――――――――┐

 │ 拝啓 アイネ姫様                 │

 │                          │

 │ 私たちと同じ立場の者がそろそろ動きだしそうなので │

 │ 退散させてもらうにゃ!              │

 │ じゃ、検討を祈るにゃ!              │

 │                     タマより │

 │                          │

 └――――――――――――――――――――――――――┘


 ......手紙でも語尾に『にゃ』がつくのかよ!! いやそれより気になるのは私たちと同じ立場の者ってまさか!?

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