第248話 魔王と戦いたかったな
僕が『マコトちゃん』という聞き覚えのない名前に必死に思いだそうとしているとタマはそれを察して声をかける。
「そう言えば記憶の中では彼女は名乗ってなかったのにゃ......ほら、アイネ姫が異世界転移する前に一緒に書類を受付のお姉さんに渡していたあの女の子だにゃ」
タマは頭を悩ませるようなそぶりを見せた後、閃いたように答えた。
「あの時の!! いやでもあの子は......たぶん別の異世界に居るんじゃないかな?」
この世界には魔王とか居そうにないわけだし......というか魔王なんて出てきたらある意味僕の行きたかった異世界になるけど、この貧弱な体じゃ魔王と戦っても全く相手にならないだろうな......うん! 間違いなく死ぬね!
「そんなこと分ってるにゃ。だけどこの世界から出るためにはワールドオーナーを倒す必要がある......そうだにゃ?」
そうか......僕の記憶を見たからそのことも知っているのか。
「うん。どうやらそうみたいだね。タマなら倒せそうじゃない?」
僕は何となくそう返してみた。しかしタマは下を見ながら首を横に振った。
「たぶん無理だにゃ......おそらくワールドオーナーは自分に対して異世界転移者の能力を受けないようにしているにゃ」
「何でそんなことが分かるの?」
「実はさっき使ったときに1人だけ能力が無効化されたのにゃ」
え? 何だって......つまりこのパーティー参加者の中にワールドオーナーがいるのか!?
「もっとも別の理由で能力が無効化された可能性やワールドオーナーが自分以外の誰かに対してやった可能性もあるから絶対に否定はできにゃいけど......」
「それは誰なの!?」
僕はタマに詰め寄って両肩を手で掴んだ。
「それはまだ秘密にゃ! 読者のみんなが推理する時間も必要にゃ!」
こんな時も読者サービスかよ! ありがとう! ......どっちにしても他にも可能性がある以上うかつに能力殺しの短剣を使えないし聞いてもしょうがないか。
タマは僕の手を振りほどいいた。
「話は終わりにゃ。私もしばらくワールドオーナーを探してみるから何か分ったら教えてやるにゃ。それじゃあ突っ込みを入れてこの夢を終わらせるにゃ。記憶を継続して起きるためには突っ込みが必要だにゃ」
「いや......いきなり突っ込みを入れろと言われてもやっぱりボケがないと突っ込みずらいというか......」
僕は頭の後ろに手を当てながら答えた。
「そうそう、もう朝だからさっさと起きた方がいいにゃ」
「何でもう朝になっているんだよ!!」
目を覚ました僕はベッドから体を起して突っ込みを入れていた。
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