第230話 高貴な方では?

「あの......先ほどから気になっていたのですが王族とかマスカット王子の話とかから察するにもしかしてあなたは高貴な方では?」

 ミカンはこちらを警戒するように尋ねた。

「まあ一応......」

「控えおろーう! こちらにいらっしゃる方をどなただと思っているのでーすか!? そう......この容姿を見れば一目瞭然。アイネ姫様にあらせられるでーすよ!」

 僕が答えようとしたところを隣からソフィアが割り込んで説明した。

 ......そんな僕ことアイネ姫様をむげにしているソフィアもソフィアで失礼なんじゃないだろうか?

「え!? あのかの有名なアイネ姫様!?」

 ソフィアは口元を押さえて、目を丸くして驚いていた。一方それに対しその弟君はというと......

「な、何だって!? 姫様ともあろう人が俺の脱衣している様子を覗き見してたんですか!!」

「あんたが勝手に脱いでいただけでしょ!! すみません。本当にすみません。うちの弟がご迷惑をおかけして......」

 ミカンはバケツを拾い上げて再び弟に向けて投げつけた後、ペコペコと頭を下げていた。

 ......やはりこの人才能あるわ......突っ込みのね!

「あの......大丈夫なんですか?」

 ミカンは不安そうな顔で尋ねた。

「え? 何が?」

「このあたりはお世辞にも治安が良いとは言い難い場所ではありません。さっきの火事もどこかのゴロツキがやったものでしょう。なのでアイネ姫様のような高貴な方がお付きの人がメイド2人なんて危険ですよ!!」

 よく見ると2人ともボロボロの服を着ていた。とても暮らしが豊かだとは言い難い生活を送っているのだろう。

「よぉよぉ......姉ちゃんたちよぉ! 俺たち金に困ってるんだけど恵んでくれねぇか?」

 声の方向を見てみると世紀末の世界に居そうなモヒカンたち10人がナイフを舌舐めずりしながらこちらを見ていた。

「ハッサク! こっちにおいで!」

 今更ながらだけどミカンの弟はハッサクって名前なんだ......

 ミカンはハッサクを強く抱きしめた。

「姉上......胸の脂肪が不足しているから骨が当たって痛いでさあ」

 ゴン!!

「姉上......ついでに頭も痛くなってきましたでさあ......」

 ハッサクはミカンからのグーの鉄拳をもらって相当痛そうだ。

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