第231話 ただのメイドがうちにいるはずもなく

「おうおう! 何身内でコントしてんだ? 俺たちが欲しいのは笑いじゃなくて金だ!!」

 モヒカンの1人がナイフをこちらに向けると他のモヒカンたちが笑いだした。

「メイド長、この人数でも大丈夫?」

 モヒカンたちの様子とは裏腹に僕は冷静にメイド長に尋ねた。

「はい。私でも問題ありませんが、ここはソフィアに任せるとしましょう」

 え? ソフィア? 話し方が変なただのメイドじゃないの? ......うちにただのメイドがいるわけないか......

 僕は心の中でノリ突っ込みをしてしまった。

「姫様! 前回は私の勇姿を見ていただけなかったので今回は活躍させてもらいまーす!!」

 ソフィアがしゃがんだと思うとモヒカンたちが次々に倒れて言った。

「い、いったい何が起こっているんだ!?」

 モヒカンの1人が他9人の仲間たちが倒れる姿を見て怯えた表情を見せた。

「え? 教えてあげまーすよ。ただの石を弾いて飛ばしているだけでーすけど......ね!」

 ソフィアは立ち上がって親指で人差し指に挟んだ石を弾いて最後の1人のモヒカンを倒した。

「え......えぇ!? 何でメイドがこんなに強いんですか!?」

 ミカンさんが至極当然な反応をした。

 だけどねミカンさん......それは突っ込んじゃダメなんだ。なぜかって? この世界のメイドはすごいのが当たり前なんだ......あれ? でもこの反応、もしかしてこの国のメイドはそんなに凄くないのかな? それはさておき僕は1つ考えたことがある......それは、

「よし! 決めた! この国を平和にしよう!」

 あれ? 何か僕主人公っぽいこと言ってない? 自分で言うのもなんだけどちょっとカッコ良くない?

「姫様、それは無理です。この国の所有権はマスカット殿下とその家族にありますので干渉することはできません」

 メイド長が正論を僕につきつけた。

「いいじゃん! 買収とかそういうことしてうちの国にしようよ!!」

「買収ですか......」

 メイド長が複雑そうな顔をした。

 うん。言ってみただけだよ。できるなんて思ってないから......

「姫様のおこづかい1年分くらいで問題ないでしょう」

「意外とお手軽価格!!」

 メイド長の言葉に僕はそう突っ込みを入れざるを得なかった。

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