第228話 火事だ!

 しばらく進むと農園が見えていた。

 なるほど......マスカット王子の国はマスカットが名産って言っていただけあって、見渡す限りマスカット農園が続いている。心なしかマスカットのいい匂いが......いや待って。

「何か......臭くない?」

 これはそう......何かが焼ける臭い。さっきから焦げ臭いのだ。

「私してないからね! おならととしてないからね!」

 コロネは頭と手をブンブンと振って否定していた。

 いや......別におならの話はしてないんだけど......というかおならしてたんだろうか?

「姫様、おそらくあちらの火事が原因かと」

 メイド長は農園のそばで火の手が上がっている場所を指差した。

「そっか! 火事なんだ! ......いやそうじゃなくてこれは一大事だよ! 火を消すのを手伝わないと! メイド長早速向かおう!」

「え? 私のお見合いは......?」

「コロネ! 今はそれどころじゃないでしょ!」

「そ、そうね。分ったわ」

 コロネも納得したところで僕たちは火事の火元へ向かった。


 火元にたどり着くと小屋から火が出ていた。そして1人の少年がその小屋の前に立っていた。

「水! 水! 水がないじゃないか!! ......はっ! いやここにあるぞ!! 自分を信じるんだ。お前ならできる!!」

 少年は自分のズボンのベルトに手をかけて外そうとする。

 もしかしてこの少年......全年齢設定のこの小説でとんでもないことをしようとしてない? やれやれ面倒だけど僕が突っ込みを.....

 いきなりその様子を見ていと思われる女性が後ろからバケツを少年めがけて投げつけた。

「バケツを使いなさいよ!! あんた! 人様が見ている前で何とんでもないことしようとしてんのよ!!」

「いててて......何するんですかい。姉上......それに人前ってこんなところに人が......キャッ! 本当に居た! 恥ずかしい!!」

 少年は僕たちがいることに気づいて赤面して顔をおさえた。僕はそんな少年の横を通り過ぎて女性の方の手を握った。

「まさか......この世界に僕以外の突っ込みキャラがいたなんて......」

 ヤバイなんか嬉しくて涙が出てきた。

「えっと......突っ込みキャラ? 何のことですか?」

 女性は状況が読めず困惑の表情を浮かべた。

「姫様、火事の消化が完了しました」

 さすがはメイド長......僕が感極まっているうちに消化を完了させたようだ。

「火事の消化をしていただきありがとうございます。あ、申し遅れましたが私はミカンと申します」

 というか......この人も果物の名前なのか。

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