第213話 兄妹のつながり
「お兄様! 『アレ』をアイネお姉様にお見せするのはどうかしら?」
セレナちゃんはロイド王子の腕の袖を引張り耳打ちしていた。
『アレ』って何だろう? 今度は変なたくらみでないことを祈るばかりだ。
「そうだね......『アレ』を......姫に見せよう」
ロイド王子はセレナちゃんの目を見てゆっくりと頷いた。
だから『アレ』って何!? というか兄妹とはいえもしかして『アレ』で会話が通じているの!?
ロイド王子は部屋の奥の方へ行き、置いてあった小さなケースを持っていた。
「何これ?」
僕は不思議に思いながらそのケースを眺めた。土が入っている別に珍しくもないケースにしか見えないけど?
「これは......私が世話している......蟻」
そう言われてロイドが手に持っているケースの中身をよくよく見てみると土の中の上を蟻が何匹か歩いていた。
......ところで何でこんなもの見せてくれたんだろうか? さっぱり分らないな。
「お兄様! 違いますわ! 何で蟻なんて見せているんですの!!」
セレナちゃんはロイドが持っていたケースを取り上げた。
やっぱり兄妹でも意思疎通できてなかったのかよ!!
「セレナちゃん、結局『アレ』って何のことだったの?」
「アイネお姉様! よくぞ聞いてくれましたわ! まずは隣の部屋に移動いただけますか?」
何でこの部屋案内したんだろう? まさかさっきのロイド王子にハグさせるためだけにこの部屋に連れてきたの?
などと考えながら僕たちは隣の部屋に移動した。部屋に入るとずらりと本が並んでいた。僕の転生前に住んでいた市の図書館並の広さはあるかもしれない。
「お姉様が本がお好きと話を聞きまして国中からかき集めましたわ」
別に本が好きなわけじゃないんだけどね。この世界で暇つぶしの道具がないから仕方なく......って何でそんなことをセレナちゃんは知っているんだろう?
「姫様、先日セレナ様から姫様の休日の過ごし方について聞かれましたのでお答えしました」
犯人はメイド長だったようだ。
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