第212話 悪だくみは失敗するもの

「さ、こちらですよ。アイネお姉様」

 案内されたところは一際大きなドアの部屋だった。そして僕がドアに手を伸ばそうとしたところで、セレナちゃんとそのお付きのメイドが僕の背後に移動したのだ。

「えっと、何しているのかな?」

「何でもありませんわ。そんなことよりどうぞ中へお入りください」

 セレナちゃんがあさっての方向を見ている。何かを企んでいるのは間違いない。そう僕の直感が告げている。

「コロネ、悪いんだけど今朝突き指をしちゃったから代わりにドアを開けてくれないかな? 友達の君にしか頼めないんだ」

「しょ、しょうがないわね。ま! 友達の頼みと言われちゃ断れないわね」

 実にちょろいね、さすがチョロコロネ。あ、間違えたチョココロネだった。

 コロネがドアに手を伸ばしたところでセレナちゃんが止めに入ろうとした。

「ちょっ......それはずるいですわ!」

 しかしその抑止も間に合わずコロネはドアを開いた。

「会いたかったよ」

 ドアが開いたのと同時にロイド王子が出てきてギュッとハグされた。

 ――――――コロネがね!

「え!? イケメン!! わたくしそんなこと言われたの初めて......でもわたくしにはザックス王子と言う心に決めた人が......いやでも」

 コロネはロイド王子に抱きつかれたのが嬉しいのか恥ずかしいのか顔を真っ赤にしていた。

「お兄様、作戦失敗ですわ。私の考えたハグしてみたらドキドキして好きになっちゃった大作戦......」

 セレナちゃんは頭を抱えて首を横に振った。

 実に分かりやすい作戦名だけど男にハグされてもドキドキしないからね?

 セレナの言葉でロイド王子は自分が抱きしめているのが僕ではないことに気づいたのかコロネから身を離した。

「セレナ......やっぱり......悪だくみしたから......失敗した」

 ロイド王子はセレナちゃんの頭に手を置いた。

 どうやら今回のこの作戦はセレナちゃん主導の計画だったらしい。

 とりあえず僕は男と抱き合うなどというふさげたシチュエーションを回避できて助かったよ。

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