第205話 人気と不人気

「え、ちょ......メイド長! なんでシズクなの!?」

「理由は簡単です。シズクには当家のメイドとしてやっていける能力を持っているからです」

 能力? まさか歌やダンスのことじゃないよね? どう考えてもいらないよね? そんな能力!

「姫様、人を見抜く能力ですよ。面接の中でシーにゃんは適切な質問を行っていたのでメイド長はそれを高く評価したものと思われます」

 サーシャがメイド長の代わりに代弁した。

 ......あれ? ということはサーシャはただのアイドルオタクになり下がったわけじゃなかったのか! あんな感じでもどうやら面接はちゃんとやっていたのかよ!!

「サーシャ、その『シーにゃん』とは何ですか?」

「イエ......ナンデモアリマセン......」

 サーシャはメイド長から目線を逸らした。

 今回の採用試験は終わってしまった。どうしよう......メルダリンから情報を聞けないじゃないか!!

「お姉様! お姉様!」

 下から声が聞こえた。やはりというべきかスカートの中を覗き込んでいるアリスがそこに居たのだ。

 というかまだ帰ってなかったんだね......

「どうしたの?」

「メルダリンは私のところで雇いますわ」

「いや、そんな簡単に雇うって......」

 アリスの提案はありがたかったのだが当家のメイド採用試験でこんなに受験者が居たんだ。アリスのメイド採用試験だって簡単に採用されるのは無理だろう。

「ご安心ください。アリス様のところのメイド採用試験の受験者は姫様のところの1000分の1程度しか居ません。年によっては受けに来る人が居ないこともあります」

 メイド長がいつものように僕の心の声の疑問に答えた。

「ちょっと待って......何でそんなに少ないの!?」

 僕はメイド長の答えに僕は突っ込みを入れざるを得なかった。

「アリス様がメイドたちにセクハラをするからです。今残っているメイドたちは凄腕の者たちばかりなのでアリス様のセクハラを見事回避しています」

 とても単純な理由だけどしっくりくる理由だね。アリスのセクハラを回避するメイドたち......ある意味当家のメイドたちと同レベルの凄いメイドたちが揃っているんだね。

「違いますわ!! セクハラさせてもらえないんじゃないわ! セクハラするほどの色気を感じないからしないだけですわ!! ......ともかく今年は受験者が居なかったので無条件合格ということですわ」

 アリスは何を張り合ってるのだろうか......? 妹のアリスのところのメイドになるならそこそこに接点があるだろうしとりあえず良かったかな?

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