第206話 新入メイド

「......と言うわけでよろしくなんだお!」

 当家のメイドたちの前で挨拶するシズク。新人を迎えて当家のメイドたちもいつもより目が輝いているように見える。

「「よろしく! シーにゃん!」」

 声をそろえて挨拶する当家のメイドたち......あれ? 何か違和感があるんだけど。

「シーにゃん、ダンスが得意なんだってね。今度見せてよ!」

「シーにゃん、こっちに笑顔を見せて!」

 と、当家のメイドたちがシズクに取りこまれている!? 完全にシーにゃんというアイドルのファンになっている!?

「今日から働くことになったシズクです。まだ新人なので分らないことも多いでしょうからいろいろ教えてあげてください」

 よかった......メイド長だけはシーにゃん呼びしないんだ。

「メイド長も、ぜひシーにゃんって呼んで欲しいんだお」

「呼びません。それからあなたたちもその変な呼び方をしないように」

 グッジョブだよ、メイド長! よくぞシズクのシーにゃんアイドル計画を止めてくれたよ。

「そうだ、メイド長。アリスはどうしたの」

 先ほどのメルダリンを雇う宣言以降アリスの姿を見ていないのだ。

「アリス様ならあちらに」

 メイド長は部屋の入口の方を指差した。

「今日の勉強はもう終わりましたわ!! 別にここに居てもよろしいじゃありませんか!!」

 アリスが必死にドアにしがみついている。

「いえ、本日はお勉強以外にお稽古の時間が残っております。すぐにお帰りください」

 今朝見た2人のメイドがアリスをドアから引きはがそうとしていた。

 なんだかアリスは勉強とか稽古とかいろいろ大変そうだな......王族ってのも自由がなくて大変なんだな。他人事じゃないけど......

「せめてあと10分お姉様にセクハラさせてもらってから帰りますわ!!」

 どうやらまだアリスは僕にセクハラをする気らしい。

「すぐに連れて帰ってくれる?」

 僕は2人のメイドにお願いした。

「分りました。すぐに......姫様! こちらをご覧ください」

 2人のメイドのうち1人が白くひらひらしたものを取り出した。

「そ、それはまさか!?」

 それを見たアリスは思わずドアから手を離してしまった。その隙を見過ごさず2人のメイドはアリスを確保した。

「これは私のものです」

「ガーン! は、謀ったんですの!? この私ともあろうことがおばさん相手の下着に......不覚でしたわ!!」

 コントのようなやり取りをしながらアリスとそのメイドたちは帰っていったのだった。

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