第204話 なんで今帰って来たの?

「では、シーにゃん! 心苦しいですが一旦控室に戻っていただけますか? 必ずやシーにゃんの合格の知らせを持って来ますから!!」

 サーシャは部屋のドアを開けてシズクを外に誘導した。

「楽しみにしてるんだお! またあとで会おうだお」

 シーにゃ......いや間違えた、シズクは部屋から出て行った。

「ところでメイド長はいつ帰ってくるの? 受験者たちは控室で待ってるんでしょ?」

「ご安心ください、姫様。もう帰っております」

 隣を見るとメイド長が立っていた。なかなかにお早いお帰りだったようだ。

「メイド長、こちらが姫様と私の審査表です」

「確かに受け取りました。では、この審査表を元に私の方で審査します」

 メイド長はサーシャから審査表を受け取って数十秒間2枚の紙を眺めていた。

「で、結局合格者は誰にするの!?」

 僕は待ちきれずメイド長に尋ねた。

「はい、合格者は......」

 メイド長が口を開いたところでドアが勢いよく開かれる。

「メイド長! 今、戻りましたよ! 私の無給休暇もここでストップでいいですよね!」

 息を切らしながら入ってきたのはアスカだった。

 何て間の悪いタイミングで入ってくるんだよ! こっちは重要なことを聞いているところだったのに!

「ずいぶんと早い帰りでしたね。もう少しゆっくり帰ってきても良かったのですよ」

「いえ! 無給休暇じゃ私の生活費が持ちませんから飛んで帰ってきました!!」

 メイド長に対して何のアピールにもならないのになぜかアスカは誇らしげだった。

「そんなに働きたいのであれば庭の草むしりでもやってもらいましょうか」

「はい! このアスカ! 早速取りかかります!」

 家のお手伝いみたいな仕事をメイド長から承ったアスカは部屋から出て行った。

「姫様、先ほどの合格者の件ですが、シズクにしようと思います」

 メイド長は僕に無慈悲な言葉を突き付けたのだった。

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