第203話 合格者の決め方

「え? 私にはもうシーにゃん以外目に入ってないんでそんな人は居なかったということで!」

 どうやらサーシャは是が非でもシズクを合格させるつもりのようだ。

「私もそんな人、記憶にないんだお」

 シズクは考えるような様子を見せた後に答えた。

「いや、シズ......シーにゃんの前に面接した人だから知らないのも当然だよ。だけどサーシャが知らないってのは問題だよね?」

 僕はジト目でサーシャを見た。

「う、分りましたよ......ちゃんと審査しますよ。まあ、どうせ合否判定するのはメイド長ですから、姫様や私が合否を決めるものじゃないですよ」

「え? どういうこと?」

「あれ? 私言いませんでしたっけ? 姫様と私は審査表に受験者の印象を書いてそれを見てメイド長が合否を決めるんですよ」

 初耳だよ! つまり、メルダリンを合格させる決定権は僕にはないのか!?

 サーシャはあることを思い出したかのように言葉を続ける。

「あ、そうだ! どうしても姫様がある受験者を合格に推したいのでしたら、メイド長も『あるメイドにやめていただければ姫様が推した人を合格としましょう』と言ってましたけど、どうしますか?」

 あるメイドってアスカだよね? 名前言わなくても分かるよ! うーん。さすがにこの世界とおさらばするつもりとはいえ解雇するのはやはり気が引けるな......というか順当に考えてシズクよりメルダリンのほうが合格の可能性高くないだろうか? なら下手に小細工しなければメルダリンが合格しそうだね。よし! それに賭けよう!

「いや、それは止めておくよ。メイド長に普通に合否を決めてもらうことにするよ」

「そうですか。分りました。では、この審査表に記入をお願いします」

 サーシャは審査表を僕に手渡した。

「ありがとう......って何これ?」

 渡された紙にはシズクの欄がベタ褒めされていて、他の受験者はほとんど何も書かれていなかったのだ。

「あ、すみません。それ私の書いた紙でした。何なら姫様の書く方の紙も私が書いておきますよ。ちゃんとシーにゃんとのころにいいこと書いておきますから!」

 いや......シズクにいいこと書こうとしている時点で、サーシャは僕の意図通りに書くつもりないよね!

「僕が書くからいいよ!! 今サーシャが持っている紙を渡してもらうよ!」

 僕はサーシャから紙を奪って書くことにしたのだった。

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