第199話 人の振り見て我が振り直せ

「失礼しました......」

 ラムネは落ち込んだような様子で部屋を出て行った

 結局ラムネの面接は終始シズクの独壇場って感じで終わったので、全然アピールできず相当ショックだったのだろう。でも残念だけど仮にアピールできたとしてもメルダリンに合格してもらう必要がある以上どっちにしても合格させるわけにはいかないのだ。

「お疲れ様でした、シーにゃん! こちらお茶です」

 サーシャはなぜかタオルでシズクの額の汗を拭って、お茶を手渡していた。

 ......別に汗は出てるように見えないけど。

「お茶、ありがとうだお。さっきの人は姫様のメイドにはふさわしくないんだお。不採用にして欲しいんだお」

「えぇ、もちろん先ほどの受験番号1592番は不採用で」

 なんだかもはやサーシャがシズクのマネージャーみたいになってるんだけど......

「今年の受験者は不作なんだお。いつもならもっとましな受験者がいるのに......全く近頃のメイドたちはなってないんだお」

「全くですね......」

 和やかな昼のひと時。はたから見れば試験官の上司と部下の他愛ない会話に見えなくもない。

 どうやらボケ同士の会話にはやっぱり突っ込みが必要だ......

「シズクも近頃のメイドだよね? しかも何でシズクのほうが上司役っぽい立場になっているんだよ!? そしてサーシャも同意してないで突っ込んで欲しいんだけど!」

 僕が突っ込みを入れ終わるとドアからノックの音がして開かれた。

「失礼するぞ」

「減点10点だお。タメ口を使うなんてありえないんだお」

 シズクは紙に何かを書くようなそぶりをしていた。別に書くものを持っていないのに。

 いつから点数制になったの? それにさっき僕にタメ口をきいていたのは誰だったかな?

「あ、すまねぇ......じゃなくてすみませんでした。堅気の人と話すのは久しぶりで慣れてないものでして」

 受験者の人は頭の後ろに手をあてて頭を軽く下げた。

 堅気の人と話すのは久しぶりって何!? なんだかまたとんでもない人が来たような感じがする。

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