第196話 名前の呼び方って大事だよね

「分りましたよ。じゃあ形式的に質問しておきますよ......受験番号128番、志望動機とか含めて自己PRしてもらえますか?」

 サーシャはしぶしぶ面接らしい質問をした。

「はい! 私はシズクだからシーにゃんって呼んで欲しいんだお。さあ呼んでみてごらん!」

「シーにゃん!!」

 シズクの言葉にサーシャは立ち上がって叫んだ。

「あれれぇ? そっちの可愛いお嬢さんは恥ずかしがっているのかな? もう一回言うからシーにゃんって呼んで欲しいんだお。さあ呼んでみてごらん!」

 シズクは耳に手をあてて立ちあがって僕に近づいてきた。

 何これ? こいつはまた新しいパターンの面倒なキャラかよ! というかいつの間にかタメ口になんだけど? 一応、僕は姫様なんだけど? シズクの雇用主になるかもしれない人なんだけど?

「シーにゃん!!」

 隣から耳に痛い大声でサーシャが叫んだ。

「姫様! 何で呼んであげないんですか!? これから長い付き合いになるんですよ」

 サーシャはちょっと怖い目つきで僕の両肩を掴んだ。

「いや、長い付き合いになるかどうかは面接の結果次第だからね」

 ......内心はメルダリンのことや’メイドの仕事ができるかどうか云々以前にこれは間違いなく落とすべき人だと思ってるけどね。

「アイネ姫様は私のことシーにゃんって呼んでくれないんだお......悲しいんだお」

「はいはい......じゃあシーにゃんの自己PRの続きをしてもらえるかな?」

 こういうタイプはさっさと折れて話を先に進めるに限るね。

「嬉しいんだお! ダンスでも踊りたい気分なんだお!」

 この子は一体何しに来たんだろう? シズクはその場でダンスをし始め......ってホントに踊り始めたよ。

「シーにゃん、可愛いよ!! 頑張って!!」

 サーシャも取りこまれたように応援していた。

 な、何なんだこの子は!? 面接が全く進まないじゃないか!? 別の意味で強敵じゃないか!

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