第193話 違和感の正体
「いや、なんか話が長そうだったんで撃っといた方がいいかと思いまして」
サーシャは銃を上に向けて決め顔で答えた。
そんな理由で撃ったのかよ! 生かしとくとまた姫様の命を狙いそうなのでとかそういう理由ならまだ分かるけど......
「ほら、もしかしたら仲間とかいるかもしれないし、犯行の動機は聞いておいた方がいいんじゃないかな?」
「姫様がそうおっしゃるなら......変な動きをしたら撃ちますよ」
サーシャは再び銃口をメルダリンに向けた。
「メルダリン、どうしてワールドオーナーを殺そうとしてるの?」
「いいだろう......話してやる。私の目的はワールドオーナーを殺してこの世界を終わらせる。そして歪んだ女神システムを崩壊させディオネ様を救うことだ」
何を言っているだこいつは......女神だって? 頭でもおかしいんじゃないだろうか? いや違う、ディオネと言う名前......どこかで聞いたような......痛っ!
あの時と同じく頭に痛みが走り古いビデオでも見ているかのように脳内に映像が流れだした。
前回と同じ肌の白い女性が僕の目の前で笑っていた。
『アハハハ、君は本当に面白いことを考えますね。君が女の子になればその作戦通りきっとうまくいくでしょう』
「じゃあ後のことは頼んだよ。ところであんたの名前を聞いていなかったね......何て名前なの?」
僕は目の前の女性に問いかけた。
『私の名前はディオネ。女神です』
今回見えた映像はそこだけだった。
「その反応! やはりディオネ様のこと知っているな! 武器生成!」
メルダリンの背中が光ると、裸の男が写っている本が現れてサーシャが手に取った。
「こ、これは! ただのBL本ですか......こんなの私に!? ぐはっ......裸の女まで写っている!? 汚い大人の女の裸を見せるなんて卑怯な......」
「それ武器じゃないでしょ! というか何でサーシャは吐血してるの!?」
僕が突っ込んでいる隙にメルダリンは立ち上がった。
「これで終わりだ! 武器生成!」
先ほどと同じくメルダリンは銃を生成して僕に向けて発砲した。今度は僕は目を閉じずにずっと見ていたが信じられないことが起きたのだ。まるで数秒間時間が消し飛んだかのように銃弾が消えて、メルダリンの手から銃も消え、サーシャがメルダリンを組み伏せていた。
「貴様......やはり能力を使っているな......」
床に押し付けられた顔を横に向けメルダリンはサーシャを睨んだ。
「気づいていたのですか......ワールドオーナーの協力者の私の前でペラペラとワールドオーナーの話をするくせに意外と勘が鋭いですね......」
違和感の正体......それはこの世界にないはずの“BL”という単語をサーシャが話していたことだと今気づいたのだった。
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