第189話 僕だって勝つんだ!

「そんなことより来年の試験のために、3次試験の様子でも見たらどうでぇすか?」

「エリナのくせに上から目線なんて生意気ね! 言われなくてもそうするわよ!」

 グレタはどっしり構えて僕の目の前で仁王立ちした。

 いや......なんでぼくの目の前に立つんだよ!? 邪魔じゃないか!

 仕方がないのでグレタの右横から前に出て試験を見ようと移動しようとする。

「えぇ!! まさかそんなやり方が!?」

 突然グレタが僕の進路を邪魔するように興奮しながら移動してきた。

「あの、僕もその『まさか』のことをした試験を見たい......」

「おぉおおお! すごい!! すごいじゃない!!」

 グレタは大声を出しながら試験を見るのに集中しているようだ。なぜなら僕の声がまるで聞こえていないかようにグレタは全くこっちを気にしていないのだ。

「ハイハイ......こういうパターンね。言うだけ無駄なタイプね。右がダメなら左から見ればいいじゃないか」

 仕方がないので次に僕はグレタの左横から前に出ようとする。

「な、なんだって! そんなやり方もありなの!?」

 またもやグレタが僕の進路を邪魔するように興奮しながら移動してきた。

「ちょっと! 邪魔なんだけど! 僕も『そんなやり方』を見たいんだけど!」

 僕は必死にグレタの横をすり抜けようと努力したがまるで抜けられる気がしない。

 ......というかわざと邪魔しているんじゃないだろうね! ともかく、ここで諦めたら協力者探しもできないじゃないか! スピードで勝負するんだ! 思いっきり走り抜ければきっと抜けられるはずだ!

 僕は決意を胸にもう一度全力でグレタの左横を駆け抜ける。

「やったついに抜けた!」

 僕はついにグレタに勝ったんだ! これで試合が見れる!

「そこまで!」

 僕の頑張りもむなしくメイド長の一声で3次試験が終わったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る