第188話 勝利は確実?

 3次試験会場として用意されていたのは食堂だった。いつもと少し様子が違いテーブルや椅子が片付けられている。

 以前、メイド長がメイドには料理技術は求めないと言っていたので、おそらく料理勝負ではないと思うけど......ちなみに今は次の試験開始までの休憩時間なのだ。

「ふっふっふ......コゼットとペルラが失格になった今! もはや私の採用は確実! どっちかが残ったらエリナに仕事をやめてもらおうと思ったけど助かったわね」

 受験者の1人がエリナの肩にポンと手を置いた。

「今回の試験で残った同郷出身はグレタだけでぇすね。私も同郷のと一緒に働けるようになると嬉しいでぇすので頑張って欲しいでぇす!」

「安心しなよ、私が負けるわけないじゃない」

 エリナは嬉しそうな反面不安そうだ。なのにエリナの肩に手を置いた人......グレタは自信満々に拳を握りしめていた。

 ......グレタは何でこんなに自信たっぷりなんだろう? まだ50人もいるのに。

「あの......何で採用は確実なの?」

 僕は気になったので理由を聞いてみることにした。

「アイネ姫様、見て分かりませんか? 私以外のメイドはどう見ても貧弱な体つきじゃないですか。私が負けるわけありませんよ」

 体つきは関係ないと思うんだけど......

「では、時間になりましたので3次試験を開始します。3次試験はこの食堂の床を掃除していただきます。制限時間内により広く、より綺麗にしたものが次の試験に進めます。試験官は私とマーラ......は今は役に立ちそうにありませんので、代わりにこちらに居るソフィアで担当します」

 メイド長が3次試験の内容を淡々と説明した。

 どうやら3次試験の試験官は元々マーラだったようだ。もしかして僕がついてきたせいであの病気のような症状が出て降板させられたのだろうか?

「姫様! よろしくお願いしっまーす!」

 ソフィアは僕のほうを見て笑顔で両手を振っていた。仕方がないので僕は苦笑いで右手を挙げて手を振った。

「ソフィア、姫様はあちらでご覧になるだけです。今あなたがすべきは試験官として受験者を査定をしてください」

「はーい。すっみませーん! メイド長」

 何だか軽そうな人だな。このソフィアって人。

「ソフィアったらまだあの変なしゃべり方してまぁすね。全く......直すように言ったんでぇすけどね」

 ......それをエリナが言うの?

 僕があっけにとられているうちにメイド長が話を続ける。

「道具はこちらに用意していますので自由に使って構いません」

 メイド長は指を鳴らすとメイドたちが掃除道具を台車で持ってきた。それを確認してメイド長は開始の合図を出す。

「それでは始め!」

 グレタが走り出して真っ先にモップを確保し、掃除用具に近づく受験者たちの前に立ちはだかった。

「ここから近づくものは皆排除するわ! 怪我したくなかったら掃除用具に近づかないことね! これで私以外は掃除ができない! つまり私の勝利は確実ね!」

 まさかの他の受験者たちを蹴落とす作戦!?

「受験番号4322番のグレタは失格です」

 そんなこと当然メイド長が許すわけもなくグレタは失格となったのだった。

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