第186話 ルール違反は失格です
会場がざわめき始めた。メイドなのに洗濯の道具を知らない人が居たのだ。当然の反応と言っていいだろう。
「受験番号3594番は失格......と」
そう言ってサーシャが紙に書き込もうとする。
「待ちなさい、サーシャ。この試験は記憶力を試すものではありません。あくまで技術力を見るもの。洗濯の方法を知らないからと言って不採用にする必要はありません」
「分かりました、メイド長......」
サーシャは納得していない様子だったが了承したようだ。
失格にならなくて僕にとっては都合が良かったかもしれない。これであのメルダリンを観察することができるぞ。
そんなことを考えながらメルダリンを見てみると何かつぶやいているかのように口元が動いていた。
何だ? 何か言ったのか?
「では、この板の説明しましょう。この板は洗濯板と言ってこのように使用して洗濯をするのに使うのです」
僕の考えごとをしているとメイド長は洗濯板の使い方を実践した。
「他に質問がある者は? ......居ないようですね。では始めなさい!」
メイド長は手を挙げるものが居ないことを確認して開始の合図をした。
「いやぁ懐かしいでぇすね」
僕の横に居るエリナはうんうんと頷いている。
そっか......エリナも試験受けて合格したんだもんね。自分が試験を受けていたころを思い出して感慨にふけっているのだろう。
「今にもつかみかかりそうなあの感じは本当に懐かしいでぇすね」
「ちょっと待って......何の話をしているの?」
僕はエリナと話がかみ合っていないと思い聞いてみた。
「何って......姫様、あちらをご覧いただけまぁすか?」
僕はエリナの指をさしたほうを見た。
「おい! 今、水しぶきが飛んできて目に入ったじゃないの! ぶっ殺すわよ!」
「そっちこそさっき肘が肩に当たったせいで手元が狂ったじゃないの! ぶっ殺すわよ!」
エリナの同郷のメイドたちが掴み合って喧嘩を始めていたのだ。
えっと、その、つまり......懐かしいってこれのこと?
「勝手な行動を行った受験番号4322番と4323番のコゼットとペルラは2人とも失格です」
「「な、なんですって!? ちくしょおおおー!!」」
メイド長が2人に失格を告げると、会場には2人の叫び声が響いたのだった。
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