第173話 どうやってメイドの技術を身に着けたんだろう

 ダメだ......下手に王子のほうに話しかけてしまうと僕がジーク王子を口説いているように見えるのか。だったら今度はニーナのことを聞いてみよう。

「いやぁ......それにしてもニーナはすごいメイドだよね。今もすぐにお寿司を用意してくれたし! ニーナは子供のころから凄かったの?」

 おっと......ニーナの年齢は10歳。今も子供だろという突っ込みはしないでね。

「ニーナの子供のころか......確かここに来たのが5歳のころで、メイド長になったのが7歳の時だったはず。たった2年でメイド長に成り上がるのは大人でも難しいのだから相当凄かったと言えるだろう」

 ジーク王子は思い出すように頭を悩ませて答えた。

 ......なんで5歳の子供を雇ってんだこの王子は。ロリコンなのかな? とりあえずその件は置いといて......

「へぇ、ニーナって凄いんだね!」

 僕はニーナのほうを振り向いて言った。

「お褒めの言葉、ありがとうございます。でも私もまだまだですから」

 ニーナはその場で一礼した。

「いやいや、本当に凄いよ! 是非家で雇いたいぐらいだよ!」

「有難いお話ですが、ここが私の故郷ですから」

 ニーナはやんわりと僕のお誘いを断った。

「そっかそれは残念......ところでニーナはどうやってメイドの技術を勉強してたの?」

 ニーナは目線を下に向けて答えずらそうに呟く。

「えっと......それは」

 ん......? どういうこと!? この質問に答えられないということはまさか!?

「姫様、本日はお見合いですからニーナではなくジーク殿下とお話しください」

 メイド長がニーナの方向を向いていた僕の顔をジーク王子の方向に向けさせた。

 メ、メイド長......こんないいタイミングで邪魔しないでよ。

「いや、別にかまわないよ。ニーナに興味を持ってもらっているってことはこの国に興味を持ってもらっているってことだからそれはそれで嬉しいよ」

 ジーク王子は困ったような顔をしていた。

「ほら、ジーク王子もこう言っていることだし、ニーナともう少し会話を......」

 僕は振り返ってメイド長におねだりをした。

「姫様」

 メイド長の圧のせいでニーナとの話はそれ以上できなかった。そして結局この日はジーク王子からもニーナからも有益な話は聞けずじまいに終わってしまったのだ。

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