第172話 美味しいものを食べていると幸せな気分になるね

 10分もしないうちにニーナがお寿司を持って戻ってきた。もはやご飯を炊く時間すらかかってないのにどうやって作ったんだろうか......

「アイネ様、こちらをどうぞ」

 ニーナは僕の目の前にお寿司が乗せられた皿を置いた。正調江戸前らしい大きめのネタに赤酢シャリで作られた本格的なものだった。

 でも、前世の記憶で知る限り正調江戸前のお寿司は専門店でも行かないとあまり目にする機会はないような......

「ありがとう」

 僕は醤油をつけて口に入れる。やはりというべきか新鮮なネタにほどよい握り具合のシャリ、本格的な寿司職人が作ったような完璧な握り寿司だ。

 これだけ美味しいものを食べているとなんだか幸せになってきていろいろどうでもよくなって......いかん! いかん! ワールドオーナーを見つけないと! 日本に関する知識を聞いてもダメだ。そうだ、ジーク王子が何で結婚したいかそれを聞いてみよう。

「ジーク王子は僕と結婚したいですか?」

「え、それは......えっと、はい」

 顔を赤くしてジークは自分の顔を人差し指でかきながら目線を逸らした。

 目線を逸らした! もしかして何か隠している!?

「それはなぜですか?」

 僕はテーブルを叩いて立ち上がり、すかさず質問をした。

「いや、それは......その......」

 はっきりしないやつだな......やっぱり何か隠しているのか?

「姫様、ジーク殿下のことが気になるからと言ってそんなに質問攻めをなさってはいけません」

 メイド長は僕の肩を掴んで椅子に座らせた。

 誰が男のことが気になるのもか! 単純にジーク王子に僕をこの世界に閉じ込める動機があるかを知りたいだけで......あれ? でも今の僕の態度ってはたから見ればそう見えるのか!? 訂正しないと!

「ジーク王子とは全く結婚したくないけど、ジーク王子が何で僕と結婚したいか知りたいから教えてくれるかな?」

「それは最近流行りのツンデレというやつか? 恥じらうアイネ姫もなかなか可愛いな」

 この世界ではツンデレが流行っているの? ......というかツンデレとかじゃないし、恥じらってもいないから! 本当に興味がないだけだっけどどうやら都合よく解釈されてしまったようだ。

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