第170話 さっき食べたんですよ
「ひいおじい様、ご飯ならさっき食べたとお母様が言ってましたよ」
ニーナは僕の代わりに答えた。
「そうじゃったかいのぅ......ところでお主は誰じゃ?」
老人は真顔でニーナに尋ねた。
「ひ孫のニーナでございます。今朝もお会いしましたよね?」
「どうじゃったかのぅ......よく覚えとらんわ。そんなことより......わしゃ朝ごはん食べたかいのぅ?」
老人は腕を組んで首をかしげた後に真顔で先ほどと同じ質問をした。
どうしてこうも嫌な予感というのは当たるんだろうか......この老人、話しができそうにないぞ......
「申し訳ありません。アイネ様......ひいおじい様はなぜか今日はずっとこんな感じでして。昨日までは普通に会話できていたんですけれど......また後日改めていただけますか?」
昨日までは普通に会話できていた? 何か少し気になるな。
「うん......そうするよ」
「ではひいおじい様を部屋にお連れするので、少々お待ちいただけますか? 行きますよ、ひいおじい様」
「そんなことより......わしゃ朝ごはん食べたかいのぅ?」
ニーナはまだ朝ご飯を食べたがっている老人を部屋の外に連れ出していった。
「姫様。お話が聞けず、残念でしたね。でも、本日のメインイベントであるジーク殿下とのお見合いが残ってますから元気出してください!」
カタリナは僕を慰めてくれようとしているのか声をかけてくれた。
だが、当然ながら僕にとってそんなこと言われると逆に憂鬱な気分になるだけなのだけだが......ん? いいことを思いついたぞ!
「きゅ、急に頭痛が! ......これじゃあ今日のお見合いは無理そうだ。カタリナ、悪いけどここでちょっと休ませてくれるようにニーナにお願いしてもらえないかな?」
僕は頭を押さえてうずくまった。
ま、頭が痛いのは嘘なんだけどね。今日の僕はお見合いが嫌だからこんなことをしているんじゃない! ニーナを調べるという目的があるからここで休むんだ! 特に昨日まで普通に会話できていたのにいきなり会話できなくなったというのはタイミング的に不自然だ。何かあるに違いない!
「大丈夫ですか? 姫様! すぐにニーナ様にお聞きしてきます。それから医者の手配も......」
カタリナは青ざめた表情だったが冷静な思考を働かせ、部屋から出て行こうとした。
「カタリナ、その必要はありませんよ」
しかし、ドアの前にメイド長が立ってカタリナの進路を妨害した。
「メイド長! 姫様の一大事ですよ! どうして邪魔をするのですか?」
カタリナは興奮して叫ぶようにメイド長に言った。
なんだかこの必死なカタリナの様子を見ているとなんだか悪いことをした気分になり申し訳ないな......ごめん! カタリナ!
「姫様の頭痛は嘘だからです」
そして、メイド長にはバレているわけで僕の作戦は失敗に終わった。
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